『女弁護士高林鮎子20 豊肥本線 早春の死角』

 

 このドラマのアリバイトリックはよく覚えている。

 トリックの内容はあとで触れるとして、冒頭は野球少年との真剣勝負で始まる。

 高林鮎子はバッターボックスに立つ。少年が投げたボールを2球連続して空振りした後、3球目を見事にとらえ、大飛球に。鮎子はダイヤモンドを駆け巡る。

 

 竹森慎平はパチンコ店でパチンコに興ずる。台がフィーバーとなり、玉がどんどん出てくる。

 竹森はそのパチンコ店の店員が刑事から事情聴取を受けている光景に巡り合う。竹森はその店員に困ったことがあったら、草鹿法律事務所に来るように、と言う。

 

 パチンコ店の店員が草鹿法律事務所を訪ねてくる。

 ある女性を殺害した容疑で警察から事情聴取を受けていたと説明し、無実であることを証明してほしいと依頼する。

 

 丹波哲郎さんは個性的な俳優さんだ。丹波さんといえば、Gメンを思い出すが、この高林鮎子シリーズでも、個性的な味を出している。

 有名な法律事務所の所長だが、高林鮎子という超美人の弁護士を抱えているから、さぞかし高邁な弁護士なのだろう。

 丹波さん、いや草鹿先生は正義感に熱い方だが、品格のある方とは・・・。

 

 琵琶湖の殺人と熊本での殺人。

 長浜という雑誌記者が犯人だったが、鮎子は絶対に許さないと厳しい姿勢で追い詰めていく。

「犯人にしたいんじゃありません。そうとしか思えないんです」

 鮎子が言うと、長浜はとっておきのアリバイを示す。

 滋賀県の西大津駅と瀬田駅のホームで撮った写真だ。

 最初から、このアリバイを出さなかったことに草鹿は疑問を呈す。このアリバイは本当は出したくなかったのではないかと。

 

 鮎子と竹森は滋賀県に行く。

 柿色と緑色の普通列車は懐かしい。湖西線のどかな風景とよく合う。

 瀬田駅と西大津駅のホームでアリバイと主張する写真と見比べる。しかし、どこか違和感があった。

 鮎子と竹森は次に熊本県に行く。

 撮影された当時は熊本地震の起きるずいぶん前であり、平和な風景が広がっている。一日も早い被災からの復興を願いたい。

 肥後大津駅と瀬田駅があった。肥後大津の“ひご”という文字を隠し、西大津(にしおおつ)と見せかけ、瀬田は瀬田と偽装した。

 今回の犯人に対する鮎子の怒りは相当激しい。

 こんなに激しい怒りを見せた鮎子は初めてである。

 

 このドラマは高林鮎子シリーズでも、特に印象に残っている。

 今では使わないだろう35ミリのフィルムでアリバイを偽装するのだが、その発想が凄いと思った。

 そして、鮎子の犯人に対する強い怒りである。

 

 エンディングシーンは、パチンコ店。

 鮎子の台は何度もフィーバーになり、どんどん玉が出てくる。

 そして、場面は歩行者天国へと変わる。

 

 スタイルの良さを際立たせる服装で、鮎子は颯爽と街中を闊歩する。

 真野あずささんが本当に怒ったときの表情が見られた。怒った表情も素敵だが、やはり優しく微笑んだ表情が一番いい。