2022年11月27日の日曜日に蓼科山に登ってきた。

 

と、さらっと書いてみたが、実のところ、当初は蓼科山に行くつもりではなかった。もちろん、道を間違えて蓼科山に着いてしまった、なんて面白い話でもない。

 

予定では同じ八ヶ岳の赤岳と横岳に登るつもりだった。家で少し眠り、夜中に東京を出発した。高速を快適に走り、小淵沢のインターを降りたのが4時過ぎ。その時点では、美濃戸まで車で入り、行者小屋までは暗いうちに歩くつもりだった。

 

だが、小淵沢インター近くのローソンで朝食を買おうとしたとき、ふと背中を悪寒が走った。

 

あれ、アイゼン入れたっけ?

 

アイゼンを入れたどころではない。今シーズン、まだアイゼンを見た覚えすらない。

 

万が一に車に転がってないか、ゴソゴソ探したが、もちろん見つからない。まあ、アイゼンが転がっている車なんていうのも怪我しそうで嫌だが。

 

(余談だが、若い頃、私の部屋にはアイゼンが何個か転がっており、よく客人が踏みかけていた。)

 

それはともかく、この時期にアイゼンなしで赤岳や横岳は登れない、少なくとも私は。

 

丹沢でも行ってトレーニングするか?などと考えたが、ここまで来て丹沢まで登るのも、あれだ、高速代がもったいない(貧乏性なもので)。

 

そこで思いついたのが蓼科山である。

 

蓼科山には、去年一度登ろうと計画を立てた。だが、その時は風邪気味になってしまい、万が一コロナだったら、と思い中止にしたことがあった。そのときは結局、ただの風邪だったのだが。

 

よし、リベンジだ。

 

スズラン峠から登る蓼科山は、南の方を向いている。ということは、よっぽど風が強く、かつ気温が冷え込むタイミングでなければ、雪も緩んでいるだろう。日が上がって、少し経ってから登ればアイゼンはいらないはず。

 

そこでさらに考えた。

 

普通に登れば、往復4時間で登れる山だが、それでは赤岳横岳の代替としては、あまりにあっさり終わってしまう。せっかくだから時間をかけて登る練習をしよう。ついでにメシ抜きで登ろう。

 

メシ抜きで登る、なんて酔狂なことを思いついたのは、アイゼンを忘れたことで動揺していたから、と思われるかもしれない。もちろん、その可能性は否定できない。しかし、最近、自分の登山に疑問を感じていたのもあるのだ。

 

1)行動時間が長くなると足がへろへろになってくる

2)とにかく上りで汗をかく

3)腹がへると思いきりシャリばてを起こす

 

これは一言で言って、自分の体力に対してペースが速すぎるせいではないか、と思ったのだ。

 

たとえばコースタイム8時間の行程を、6時間で終えたとする。この6時間の行程を、青息吐息、息も絶え絶えに登る人間もいれば、余裕のよっちゃんで、鼻歌交じりで登る人間もいる。両者の登山は、同じ6時間で同じ道を歩いたとしても、同じではない。これが12時間のコースになれば、両者の間には表面上にも大きな差が出てくるだろう。

 

若いころは、しゃにむに登っていた。真冬でも、樹林帯などでは上半身はクロロファイバーの下着一枚になり、大汗をかきながら、重い荷物を持ち上げ、だれよりも早く歩くことに誇りを覚えていた。そのころはそれなりの体力があったので、それでもよかった。しかし、あれから何十年もたった今、同じように登ろうとしている自分に疑問を覚えた。というか、それでは体力が持たないことを、上記1)から3)が証明しているのではないか。

 

それで私は、汗をかかない速度で登ること、さらに、脂肪代謝を中心に、極力グリコーゲンを使わずに登ることを試みようと思ったのだ。糖を摂取しないままで登った場合、一定以上の速度で登れば必ずシャリばてになるだろう。逆に言えば、脂肪代謝中心で登れば、シャリばてにはならないだろう。そこで、朝、自宅から持ってきたバターコーヒーの残りを飲む以外は、朝ごはんを抜き、山頂までは水以外を摂取しないことにしたのである。(もちろん、非常食は持っていた。さらに万一のビヴァーク用に、ガスとカップヌードルまでツェルトと共にザックに忍ばせた。)

 

そんなこんなで、ローソンでは水分のみを買い、そこからスズラン峠に車を向けたのだった。

 

スズラン峠に着いたのは、たぶん5時半くらい。正確には覚えていない。車に積んである寝袋にもぐりこみ、寒さ対策に持ってきた毛布をかけて寝てしまった。この時点では、7時くらいには起きるつもりでいた(笑)。

 

だが、気持ちよく目覚めた時、時計は9時を指していた。