2023年8月1日

年下の友人M君と山に登った。


普段は単独が多いが、これはふらっと思いつきで行くことが多いからで、人と登るのが嫌と言うわけではない。だから結構楽しみにしていた。


一緒に行ったM君は初心者だが、まだ40代前半で、普段から体も動かしている。以前一緒に高尾山で軽く走ったが、息を切らしながらもなんとかついてきていた。つまり、それなりに体力はあるという前提で今回の計画を立てたのだが、少し厳しかったようだ。結果として楽しんでくれたとは思うのだが、少し無理をさせすぎたかな、とも思っている。


さて、出発は美しの森。夜明け前4時15分に出発した。


羽衣池までは道は歩きやすいのだが、蜘蛛の巣が多い。蜘蛛の巣はヘッドライトに照らされると光るので、顔にかからずに済んだ。



羽衣池からのルートは、藪が刈ってあって、道が隠れておらず歩きやすかった。スキー場を過ぎると、しばらくは道も隠れて藪漕ぎになったが、すぐに賽の河原に着く。


牛首山を越えて順調に高度を上げる。振り返ると富士山が顔を出している。M君も順調に着いてきている。



目指す赤岳も見えてきた。



岩場が出てきた。最初の岩場は傾斜がなく、様子を見たかったので、M君に先に登ってもらう。へっぴり腰ながらもなんとか登っている。本人は必死だったそうだが。



鎖場は腕の力だけで登っている。横から足の置き方など口を出すが、登るのに必死であまり耳に入らないようだ。(M君の顔は黒く消した)



岩場にビビるM君を激励しつつ、なんとか赤岳山頂に到着。この時点で6時間弱かかった。ほぼ予定通り。


山頂でしっかり休憩。岩場で緊張はしたようだが、特に疲れもなさそう。ここまでで疲れが見えたら県界尾根で下山しようかと思っていたが、それだと物足りなさそうなので予定通りキレット方向に行くことにする。



目指す権現岳もはっきり見えている。ただ2時くらいからは天気が崩れだし、6時ごろから雷の可能性もあるらしい。現在、10時半。現在のペースなら権現岳を2時には通過できるはずである。



真教寺尾根の分岐をキレット方向に進む。



キレットのガレ場。慣れていないせいかおっかなびっくり。それでも落石は起こさず歩いている。




ところがここで問題発生。M君が遅れ出す。降りようとして体を屈めると頭が痛いらしい。山頂くらいから軽い頭痛はあったらしいが、ここに来てひどくなったとか。熱はないし、頭痛以外の症状はない。聞けば、もともと偏頭痛があると言う。しばし休憩しつつ、高度の影響も考え、しっかり水を飲んでもらう。



キレットを登り返して真教寺尾根を降りるか悩む。だが、高度の影響が大きいと思われるので、再度高度を上げるのも逆効果な気がする。水を沢山飲ませつつ、キレット小屋まで高度を落として様子を見ることとする。ツェルトもあるし、予備の水もたっぷりあるので、最悪ビバークは可能である。


方針を決めたので、キレットの残りをゆっくり降りる。


この辺りでだいぶ時間を使ってしまい、気がつくと天候悪化の兆しが。



キレットまで降りたところ、M君の頭痛はおさまったようだ。先に進めるというので、頑張ってもらうこととする。権現まで少し登れば、あとは天女山まで特に危険もない登山道を降りるだけだ。

とはいうものの、キレット小屋を出たのが1時ごろになってしまう。権現は2時半くらいになりそうだ。少しペースを上げる。

ところがM君も本調子でないせいかペースが上がらない。頭痛の再発も怖いので、まめに水を飲んでもらうが、その度にリュックを下ろして座りこんでしまう。そしてガスがどんどん濃くなってくる。この辺りから写真を撮る余裕はなくなる。結局、権現に登り返すのに2時間以上かかってしまう。山頂はガスガスで何も見えない。

三ツ頭方向に下り出し、樹林帯に入るとホッとして眠気が襲ってきた。M君も休みたいと言ってくれたので5分休憩。一瞬だけ寝る。

気がつくと、M君が私のふくらはぎを揉んでくれている。人のことを気にしている場合ではないのだが、職業病なのだろうか。おかげで私の足は軽くなったことには素直に感謝する。M君も結構余力あるのかなと、一瞬、呑気に考えてしまう。

しかし、行動再開直後、樹林帯の中の段差の大きい道になって、M君が足が痛いと言い出した。大きく降ろうとして膝を曲げると、筋肉が痛いらしい。これはもう頑張ってもらうしかないので、一応、電解質を取ってもらい(ポカリ)あとはひたすら歩く。

そんなこんなで前三ツ頭に着いたのは5時になってしまう。明るいうちの下山は無理だが、1800mを過ぎて傾斜が落ちればM君でもヘッドライトで歩ける道になる。そこまで明るいうちに行けなければビバーク、と決める。

ここでついに雨が降り出した。最初は小降りだったが、やがて本降りに。あっという間に登山道は川に変わる。歩けないことはまったくないのだが、M君の足の疲れはますます悪化して、さらにペースが落ちている。

そして恐れていた雷が。ピカっと光ってから音が鳴るまでを図りながら歩く。12秒くらい。それ以上近づいて来る様子はない。安全とは言えないが、樹林帯の中でもあり危険性は低いと判断、降り続ける。

1800mを過ぎて、道がなだらかになるころには雷も止み、雨も小降りになる。ここまでくれば一安心である。しばらくしてヘッデンを装着。慎重に降りる。M君は登山道の中の土がえぐれたところに足を何度も落とし、そのたびに筋肉が悲鳴を上げているようだ。

前三ツ頭から3時間半かけて天女山に到着。この時点で、美しの森まで歩くのは諦めて、タクシーを手配する。ところが道路の土砂崩れが復旧しておらず、天女山の駐車場にはタクシーが上がってこれなかった。そこで天女山入り口まで来てもらうことにして、そこまで下山。

結局、下に着いたのは9時。着いた途端、M君は道端にうずくまってしまう。緊張の糸がぷっつり切れたらしい。そこからタクシーに乗って美しの森に停めた車まで戻り、宿に帰る。もちろん途中でごっそりアルコールを仕入れる。

M君にはなかなかハードな山旅だったらしい。何日か後に会った時も、まだ昨日のことのようだと言っていた。