私のフリークライミングスタートの岩場は広沢寺だ。
2012年3月。
今でも覚えている。
26歳の私。
『殻をやぶりなさい』
そんなビレーパートナーからの言葉から始まった。
登れるように頑張ることはいつだって悔しさと喜びに溢れていた。
あれから10年。
一生懸命あげたクライミングの能力は
あれよあれよと落ちてしまった。
けれど、私は相変わらず岩を登っている。
京都から来た友人たちを家に泊め、
翌日一緒に広沢寺へ。
26歳の若者は、
ダブルロープの操作を習い、
私とNさんは見守る。
終了点から一緒に眺めた景色は忘れないな。
対岸の岩場で、
昔できたことが出来なくなってて悲しみにくれたけど、
立ち込めずにスリップしてできた左手の擦り傷に
悲しみだけでなくて悔しさを感じた。
登れなくなることに慣れたくはなかった。
でも、ずっと、悔しさと向き合えずにいた。
30も後半になると、
やりたいことすべてやるには代償が少なからずある。
雪山を歩ける体力を落とさずに、
クライミングの能力を維持するには、
20代の頃のような楽しいだけの努力ではだめなんだと思う。
10年という歳月、変わらない岩場。
この時期の広沢寺にこれたことは、
なにかきっと意味があるような気がする。
だからもう、悔しさから目を背けない。
2年ちょっと前の京都で
消えてしまいそうだった私を支えてくれた二人。
失われる縁があれば繋がる縁がある。
次は、どこの岩に、山に一緒に行こうか。
☆2022年3月7日