2015年4月の初ライブ、翌月5月の1stアルバムリリース以降、怒涛の勢いでアイドルシーンを駆け抜けてきたBiSHが、その勢いのままにavexからメジャーデビュー。その勝負を賭けた1stメジャーシングルが本作である。
メジャーデビューに伴い、「新生クソアイドル」の肩書を封印し、「楽器を持たないパンクバンド」とのキャッチコピーを前面に押し出した。その名にふさわしく「DEADMAN」はスピード感と焦燥感に満ちた70年代風パンクロック。言葉を次々と引きちぎって壁に叩き付けるようなアイナ・ジ・エンドのヴォーカル、それに続くセントチヒロ・チッチの真っ直ぐでガーリーな歌声、そして超絶キャッチーなサビのメロディ…が目まぐるしく流れるこの曲は、たった99秒で終わる。歌詞では「売れたい売れたい売れたい」と飽くなき野心をむき出しにし、メジャーでブチかます覚悟を宣言する。「何をほら食べさせようか」との最後の歌詞が、先代のグループBiSの代表曲「Primal.」へのアンサーとなっているところは、ファンとしては心憎いところだ。
カップリング曲「earth」は、90年代リアルタイマーにとってはavexを代表する存在といっても過言ではない小室哲也氏の作曲をBiSHらしいメロディックパンクにアレンジするという驚くべきナンバー。「夢なんて見るものじゃないよ 叶えるためにあるんだから」とのストレートな歌詞が、実際に夢を実現しつつあるBiSHの声明となっている。
ロックバンドのギタリストとしてメジャーでの活動経験もある作曲家・編曲家である松隈ケンタ氏と、元来パンク少年であったというプロデューサー渡辺淳之介氏。この二者が「自分たちのやりたいこと」をやりつつ、非常に戦略的に創り上げたのが今作であると感じる。99秒という尺は(筆者の推測だが)テレビの歌番組に出演してもカットされない長さを考慮して設定されたのではないか。また、「楽器を持たないパンクバンド」との肩書は非常に分かりやすく、「どんなグループなんだろう」との関心を引き起す力がある。賛否両論あるこの肩書だが、先代のBiSがラモーンズを模倣したバンドロゴを使用していことを考えれば、BiSのコンセプトを引き継いだBiSHの佇まいには、これ以上ないふさわしいものだと思う。
BiSHは既にテレビ地上波に登場していたが、今回のメジャーデビューに伴い、「めざましテレビ」に宇多田ヒカルや西野カナに混じって紹介されていたのには、驚いたし嬉しかった。カッコ良くて危ないヤツらがメジャーシーンで大暴れする…そんな光景を見たかったから。BiSHが「退屈な」日本のメジャー音楽シーンを面白くしてくれることを、期待してやまない。
今作は3形態でのリリースとなっている。「Music Video盤」には「DEADMAN」のPV及びメイキング映像が収められている。ちなみにこのPVは、アメリカのDJアーティストであるPorter Robinsonの「Lionhearted ft. Urban Cone」のオマージュであるようだ。海外でバズを起こすために、あえて「パクった」のかもしれない。
「LIVE盤」には、2016年1月19日 リキッドルームでのワンマンライブを収めたDVDと写真ブックレットが収められており、非常に充実した内容。ただ、ライブDVDでの音声にはCD音源が被せられており、やや興を削がれる。が、公式にリリースされたライブ映像作品はこれが初めてであり、ファンには見逃せないものとなっている。