CDレビュー:校庭カメラガール『Leningrad Loud Girlz』 | アイドルKSDDへの道(仮)

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心に茨を持つ山梨県民こと「やまなしくん」のブログ。基本UKロックが好きですが、最近はもっぱらオルタナティブなアイドルさん方を愛好しています。

アイドルラップユニット、校庭カメラガール。略称コウテカ。「って、オウテカかよ!」と思わず突っ込みを入れた音楽好きのあなたは、迷わずこのアルバムを聴いたほうがいい。冒頭4曲からして、フォークトロニカから突如としてオルタナロック的轟音ギターが炸裂する#1、クラブジャズを感じさせる#2、疾走するガールズロックの#3、ブチ上げトランス#4、といったように…インディーズアイドルとしてはこれ以上ないであろう粒ぞろいのトラックに乗せて、6人の女の子が気合を入れてラップしている!そして時おり挟まれる萌えヴォイスの破壊力が凄まじい!

そしてリリックもかなりヤバめ。「なんとかアイドル またカテゴライズ 大好きなもの歌い上げる怪獣」(#2)などといったように、既存の「アイドル」という枠を打ち破ろうとする気概に満ちた硬派なリリックが脳天を直撃する。のみならず、#7から#9では、若者の揺れ動く感情の機微を叙情的に表現した、美しい言葉をも聴くことができる。(なおCDに歌詞カードは付いていないが、公式ウェブサイトで全て読むことができる。)

このアルバムのハイライトは、間違いなく#5「Last Glasgow」だろう。ハードなライミングに続く、コーラスパートでの切ないメロディとドラムンベースがもたらす高揚感は凄まじく、ダンスフロアで盛り上がること必死のナンバーだ。そして、「ここで歌ったこと覚えててね 私がいなくなっても」とのリリックは、アイドルの生き様をストレートに言い表している。「その光の中 踊ってた君は 誇らしく微笑んでたんだ」…全てのアイドル、そして全ての表現者に捧げられるべき、切なさと高揚感に満ちた、真のアンセムというべき名曲だ。

「もるも もる」「しゅがしゅ らら」といった謎めいたメンバーの名前、コラージュを用いたジャケットのアートワーク、そして楽曲に至るまで…本物のアートを創り出したいという制作陣の気概を感じることができる。校庭カメラガール。今絶対に注目すべきアイドル表現が、ここにある。

(それにしても、歌詞にイギリスの描写は何ひとつないのになぜ「最後のグラスゴー」だったんだろう。謎である…。)