CDレビュー:おやすみホログラム「おやすみホログラム」 | アイドルKSDDへの道(仮)

アイドルKSDDへの道(仮)

心に茨を持つ山梨県民こと「やまなしくん」のブログ。基本UKロックが好きですが、最近はもっぱらオルタナティブなアイドルさん方を愛好しています。

おやすみホログラムは、新宿を拠点に活動している女の子二人組…なのだが、このアルバムだけを聴いて彼女たちが「アイドル」であると分かる人は少ないだろう。ブラッドサースティ・ブッチャーズやソニック・ユースを思わせる、ギターノイズに乗せて疾走するロック曲と、内省的なテクノ曲が並ぶ。しかも単にサウンドをなぞるだけではなく、オルタナティブロックの精神を完璧に受け継いでいる。「世界はもう明るい 部屋はまだ暗い」(「夜走る人」)っといったように、現実世界に上手く交わることのできない青年の憂鬱な心象風景が次々と歌詞に現れる。それはまさに、ブッチャーズ界隈のロックバンドが表現してきた世界観のそれであった。

しかし、彼女たちは「暗い曲」ばかりを歌っているわけではない。おやすみホログラムのテーマ曲ともいえる「Drifter」で二人はこう歌う。「僕らがもっと笑わなくちゃ 前には進めない」…この簡潔な声明は、アイドルの真実、そして僕たちの真実だ。 憂鬱にからめ取られ、自問自答を繰り返しながらも「生きること」を続けなければならない僕たちのために、これ以上の言葉があるだろうか。

荒削りで内省的なロックとアイドルが出会う瞬間…それを目撃できたことは、幸運で幸せなことだった。近い将来に、激しいと評判のライブも見てみたい。このアルバムに宿るオルタナティブロックの魂を、より一層感じられることだろう。