短期集中連載「流線形’14 セルフライナーノーツ 完全版⑤ ~リトルワールド 編~」
とある繁華街を歩いていた僕は、ふと、目の前を歩くひとりの女性に目を奪われた。
上品なダークブラウンの毛皮のコート。
きらびやかなショッキングピンクのシルクハット。
カモシカのような脚。
ヘラジカのようなツノ。
!!!!????
・・・ヘラジカのようなツノ???
ハッ!
そこで僕は気づいた。
その日はリア充たちの祭典、ハロウィンだったのだ、、、
目の前の女性はアニメ「ワンピース」の登場人物、チョッパーのコスプレをした女性であった。
気が付くと周囲はコスプレの若者たちが街を埋め尽くしているではないか。
まるで、普通の格好をしている僕を「空気が読めないサブいやつ」とあざ笑うかのように、、、
僕は急ぎ足で駅へと向かい電車に乗ったが、車内も既にリア充ウィルスに犯され、ゾンビ化した(ゾンビのメイクをした)若者たちに占拠されている、、、
なるべくウィルスを吸いこまないようにハンカチを口に当て、死に物狂いで地元の駅にたどり着いた。
・・・どうやら地元の街にはウィルスは広がっていないようだ、、、
と、油断したのも束の間、
目の前に止まったタクシーから「機関銃を背負い体中に弾帯を巻きつけた、傷だらけのシガニー・ウィーバー」(のコスプレの女性)が支払いを済ませて降りてきた。
僕と目が合うと、完全に「見てんじゃねえよテメー」の顔でこっちを見てきた。
撃たれるかと思った。
ていうか、ハロウィンでコスプレしたときって、一人で帰るとき大変だよね。着替えとメイク落としは持っていかないとね。それが言いたかっただけでした。
改めましてこんにちは。非リア充のこいしです。
「セルフライナーノーツ 完全版」第五回、M-5「リトルワールド」をお送りします。
・・・・・・・・・・・・・・・・
■リトルワールド
作詞/作曲:岸田小石
綺麗な花が咲いたのに 待ちわびた夜明けが来たのに
何故か腹ペコなんだ そう いつでも
怖い夢で目が覚めた 泥沼に足を取られて
周りの人は誰もが 気付かないフリをしていたよ
宇宙の闇に 飾りをつけたら
今では それなりに
キラキラ 輝いてるけれど
サヨナラ 遠くの空に 消え去ってく夏の背中
もうずっと前に見失ったけど 手を振ってた
こぼれ落ちていった涙は 果てしない海のどこかに
迷い込んで いつかまた 出会う日が来るのかもね
魔法の言葉で 君の悲しみを消し去ってしまおう
今は 子供みたいに ただ 笑ってよ
ボサボサ髪のロックスター 白黒のポスターの中で
歌とギターと愛で この世界に色をつけるよ
強い雨で 消えた宝物
二度とはこの手には戻らない
それは知ってるけれど
いつのまにか僕らは あてどもない旅の途中
小さな鼻歌 風に乗って 知らない街へと
降り注いだ朝の光 ルミナスブルーのセスナが
テイクオフ!
ためらいがちに空へと駆けて行った
これは小さな世界 僕の手の中
握りつぶしてしまわぬように 抱き寄せた
・・・・・・・・・・・・・・・・
この曲は、夏が去っていくときの切なさに紛れて芽生えた、ややこしーい考えから生まれた曲です。
世界は広いのか、狭いのか?
人生は長いのか、短いのか?
そもそも、人生とは、世界とは一体なんなのか?
みたいな話はきっと遠い昔から色んな人によって議論されてきた事ですが、そんなもんは人それぞれの考え方次第なので、答えなんてきっとありませんよね。
「リトルワールド」という曲名は、そのまんま「小さな世界」という意味で、本当はニュアンス的に「own little world」(「自分の中の小さな世界」)という曲名にしたかったのですが、語呂が悪いと思ったのでこの曲名にしました。
現実世界で起こっている物事の全ては、人それぞれが自分の脳内のフィルターを通して見ている世界なので、ある意味では誰もが「自分の中の小さな世界」で生きているという、ひとつの考え方を曲にしたわけですね。
例えば、「何を見て美しいと思うか?」というのは人それぞれで、例えば僕は海が大好きですが、恋人を海に連れて行って海の綺麗な景色を見せたところで、彼女は単に「大量の塩水だなあ」と思うだけなのかも知れません。つまり、同じ景色でも、人によって全く違う見え方をしているはずなんです。
また、全然角度の違う話ですが、
例えば過去に死んでしまった飼いネコには現実世界では二度と会えないですが、自分の脳内ではその姿や声を思い出してネコを蘇らせ、なごんだりできますし、
例えば過去に犯した失敗を、自分の脳内で一旦無かった事にして、「あの失敗が無かったらその後こうなっていた」みたいな妄想だけはする事ができますし、
まあ、ある意味では「自分の中の小さな世界」の中でだけでは自由自在に振る舞えるわけですね。
・・・とはいえ、現実的には、過去に失ったものは取り戻せないですし、過去の失敗も無かったことにはできませんし、人は他人にとっての「自分の中の小さな世界」との兼ね合いの中で生きているので、自由自在になんか振舞う事はできないですよね、、、
もちろんこの詞の中でも何かの答えにはたどり着いておらず、僕の中の終わらない禅問答みたいなものがそのまま歌詞になっています。
今のところ、ごくごく当たり前の事を難しーく言ってるだけですし、この文章を書いてても更に良く分からなくなっているという有り様です(苦笑)。
そういえば、僕の大好きな藤子・F・不二雄先生の短編漫画にしばしば、主人公が神様になったり、地球の創造主になったり、思ったことが全て現実になるといったようなストーリー(もちろん、だいたいはモヤモヤしたオチに着地する)が登場しまして、そのあたりからもインスパイアされているかも知れません。
ちなみに、ほんとは個人的にはあんまり説教臭い歌詞って好きじゃないんです。言い訳っぽいですが、「僕も良く分からないのでみんなで一緒に考えてちょ」みたいな感じというか、それでいて、「なんとかポジティブな答えを導いて行きましょうね」みたいな感じですかね。
と、詞のテーマがやや重たいので、逆にメロディとアレンジは優しさ重視で作りました。カーペンターズの「Yesterday Once More」、ユーミンの「守ってあげたい」、竹内まりやさんの「元気を出して」あたりのイメージで、とにかく優しいほうへ優しいほうへと意識しながら作り進めて行ったんですが、いかかでしょうか?
実は流線形'14の中でも、恐らく一番メロディラインを作るのに時間を要した曲でして、サビの分かりやすいメロディに着地させる為のAメロBメロの流れがなかなかしっくりこなかったんですね。苦労した分、本人的にはかなり納得の仕上がりにはなっています。
アルバムの他の曲と比べるとパッと聴きの派手さは無いかも知れませんが、この曲がすごく好きだという感想も頂いたりしていて、それはそれで嬉しく思っています。ライブでもまたやりたいですね。
そんな感じで、以上、「リトルワールド」でした。
上品なダークブラウンの毛皮のコート。
きらびやかなショッキングピンクのシルクハット。
カモシカのような脚。
ヘラジカのようなツノ。
!!!!????
・・・ヘラジカのようなツノ???
ハッ!
そこで僕は気づいた。
その日はリア充たちの祭典、ハロウィンだったのだ、、、
目の前の女性はアニメ「ワンピース」の登場人物、チョッパーのコスプレをした女性であった。
気が付くと周囲はコスプレの若者たちが街を埋め尽くしているではないか。
まるで、普通の格好をしている僕を「空気が読めないサブいやつ」とあざ笑うかのように、、、
僕は急ぎ足で駅へと向かい電車に乗ったが、車内も既にリア充ウィルスに犯され、ゾンビ化した(ゾンビのメイクをした)若者たちに占拠されている、、、
なるべくウィルスを吸いこまないようにハンカチを口に当て、死に物狂いで地元の駅にたどり着いた。
・・・どうやら地元の街にはウィルスは広がっていないようだ、、、
と、油断したのも束の間、
目の前に止まったタクシーから「機関銃を背負い体中に弾帯を巻きつけた、傷だらけのシガニー・ウィーバー」(のコスプレの女性)が支払いを済ませて降りてきた。
僕と目が合うと、完全に「見てんじゃねえよテメー」の顔でこっちを見てきた。
撃たれるかと思った。
ていうか、ハロウィンでコスプレしたときって、一人で帰るとき大変だよね。着替えとメイク落としは持っていかないとね。それが言いたかっただけでした。
改めましてこんにちは。非リア充のこいしです。
「セルフライナーノーツ 完全版」第五回、M-5「リトルワールド」をお送りします。
・・・・・・・・・・・・・・・・
■リトルワールド
作詞/作曲:岸田小石
綺麗な花が咲いたのに 待ちわびた夜明けが来たのに
何故か腹ペコなんだ そう いつでも
怖い夢で目が覚めた 泥沼に足を取られて
周りの人は誰もが 気付かないフリをしていたよ
宇宙の闇に 飾りをつけたら
今では それなりに
キラキラ 輝いてるけれど
サヨナラ 遠くの空に 消え去ってく夏の背中
もうずっと前に見失ったけど 手を振ってた
こぼれ落ちていった涙は 果てしない海のどこかに
迷い込んで いつかまた 出会う日が来るのかもね
魔法の言葉で 君の悲しみを消し去ってしまおう
今は 子供みたいに ただ 笑ってよ
ボサボサ髪のロックスター 白黒のポスターの中で
歌とギターと愛で この世界に色をつけるよ
強い雨で 消えた宝物
二度とはこの手には戻らない
それは知ってるけれど
いつのまにか僕らは あてどもない旅の途中
小さな鼻歌 風に乗って 知らない街へと
降り注いだ朝の光 ルミナスブルーのセスナが
テイクオフ!
ためらいがちに空へと駆けて行った
これは小さな世界 僕の手の中
握りつぶしてしまわぬように 抱き寄せた
・・・・・・・・・・・・・・・・
この曲は、夏が去っていくときの切なさに紛れて芽生えた、ややこしーい考えから生まれた曲です。
世界は広いのか、狭いのか?
人生は長いのか、短いのか?
そもそも、人生とは、世界とは一体なんなのか?
みたいな話はきっと遠い昔から色んな人によって議論されてきた事ですが、そんなもんは人それぞれの考え方次第なので、答えなんてきっとありませんよね。
「リトルワールド」という曲名は、そのまんま「小さな世界」という意味で、本当はニュアンス的に「own little world」(「自分の中の小さな世界」)という曲名にしたかったのですが、語呂が悪いと思ったのでこの曲名にしました。
現実世界で起こっている物事の全ては、人それぞれが自分の脳内のフィルターを通して見ている世界なので、ある意味では誰もが「自分の中の小さな世界」で生きているという、ひとつの考え方を曲にしたわけですね。
例えば、「何を見て美しいと思うか?」というのは人それぞれで、例えば僕は海が大好きですが、恋人を海に連れて行って海の綺麗な景色を見せたところで、彼女は単に「大量の塩水だなあ」と思うだけなのかも知れません。つまり、同じ景色でも、人によって全く違う見え方をしているはずなんです。
また、全然角度の違う話ですが、
例えば過去に死んでしまった飼いネコには現実世界では二度と会えないですが、自分の脳内ではその姿や声を思い出してネコを蘇らせ、なごんだりできますし、
例えば過去に犯した失敗を、自分の脳内で一旦無かった事にして、「あの失敗が無かったらその後こうなっていた」みたいな妄想だけはする事ができますし、
まあ、ある意味では「自分の中の小さな世界」の中でだけでは自由自在に振る舞えるわけですね。
・・・とはいえ、現実的には、過去に失ったものは取り戻せないですし、過去の失敗も無かったことにはできませんし、人は他人にとっての「自分の中の小さな世界」との兼ね合いの中で生きているので、自由自在になんか振舞う事はできないですよね、、、
もちろんこの詞の中でも何かの答えにはたどり着いておらず、僕の中の終わらない禅問答みたいなものがそのまま歌詞になっています。
今のところ、ごくごく当たり前の事を難しーく言ってるだけですし、この文章を書いてても更に良く分からなくなっているという有り様です(苦笑)。
そういえば、僕の大好きな藤子・F・不二雄先生の短編漫画にしばしば、主人公が神様になったり、地球の創造主になったり、思ったことが全て現実になるといったようなストーリー(もちろん、だいたいはモヤモヤしたオチに着地する)が登場しまして、そのあたりからもインスパイアされているかも知れません。
ちなみに、ほんとは個人的にはあんまり説教臭い歌詞って好きじゃないんです。言い訳っぽいですが、「僕も良く分からないのでみんなで一緒に考えてちょ」みたいな感じというか、それでいて、「なんとかポジティブな答えを導いて行きましょうね」みたいな感じですかね。
と、詞のテーマがやや重たいので、逆にメロディとアレンジは優しさ重視で作りました。カーペンターズの「Yesterday Once More」、ユーミンの「守ってあげたい」、竹内まりやさんの「元気を出して」あたりのイメージで、とにかく優しいほうへ優しいほうへと意識しながら作り進めて行ったんですが、いかかでしょうか?
実は流線形'14の中でも、恐らく一番メロディラインを作るのに時間を要した曲でして、サビの分かりやすいメロディに着地させる為のAメロBメロの流れがなかなかしっくりこなかったんですね。苦労した分、本人的にはかなり納得の仕上がりにはなっています。
アルバムの他の曲と比べるとパッと聴きの派手さは無いかも知れませんが、この曲がすごく好きだという感想も頂いたりしていて、それはそれで嬉しく思っています。ライブでもまたやりたいですね。
そんな感じで、以上、「リトルワールド」でした。