犬や猫などペットの体に埋め込むマイクロチップ。迷子になっても無事に飼い主の元へ戻れるようにと、環境省や日本獣医師会が活用を呼びかけ、マイクロチップを入れた状態でペットを販売する業者も増えている。だが、飼い主の理解は進んでいないようだ。
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東京都江東区にある犬猫販売大手「アニマルヒューマンボンドインターナショナル」(AHB)の東京ウェルネスセンター。生後6週齢以上の子犬一匹一匹の首筋に、獣医師がマイクロチップを埋め込んでいく。円筒状で太さ約2ミリ、長さ約10ミリ。健康上害のない特殊なガラスでできており、専用の注射器に入れて皮下に注入する。時間はほんの一瞬。子犬たちは痛がる様子もない。
AHBは07年から販売するすべての犬猫に対し、事前にマイクロチップを入れている。獣医師の細川深雪センター長は「これが埋め込まれていれば、迷子になっても飼い主の元に帰ってこられる。安易な動物遺棄を防ぐこともできる」と必要性を強調する。
マイクロチップは個体識別の方法として欧米で開発され、日本では97年に実用化された。15ケタの識別番号が割り振られており、ペットの名前▽生年月▽性別▽種類▽毛色▽飼い主の名前・住所・連絡先--などを日本獣医師会などでつくるAIPO(動物ID普及推進会議)のデータベースに登録する。全国の動物愛護センターなどには専用の情報読み取り機が置かれており、マイクロチップを埋め込まれた犬や猫が保護された際、飼い主を探すことが可能だ。
施術は獣医師に限られ、動物病院で受けることができる。費用は一般的に、本体の代金や施術代を合わせて5000~6000円。加えてデータベースへの登録料が1000円かかる。
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動物保護に取り組む市民団体「地球生物会議」(東京都文京区、野上ふさ子代表)の全国調査によると、08年度に迷子になったり捨てられたりして全国の保健所などに保護された犬は7万9301匹。殺処分される前に飼い主が見つかり返還された犬は約2割にとどまる。環境省動物愛護管理室の今川正紀室長補佐は「マイクロチップを埋め込んだ犬や猫が増えれば、殺処分数をもっと減らせる」と期待を寄せる。
10年9月末時点のデータベース登録数は犬が31万9658頭、猫が6万6126頭。合わせると、3年前の約4倍に増えた。しかし、普及率は犬全体でみると3・92%(09年度末)と極めて低い。
ペット保険などを扱うアニコムホールディングスが10年8月に犬の飼い主を対象に実施したアンケートでは、愛犬にマイクロチップを埋め込まない理由について、54・8%の人が「体に異物を入れることに抵抗感がある」と回答。「あまり必要性を感じない」と答えた人も32・7%を占めた。アニコムの島村麻子獣医師は「生体に影響がないとはいえ、ペットを家族の一員と考える人にとっては受け入れにくいのかもしれない」と分析する。
一方、せっかくマイクロチップを入れたペットを購入したにもかかわらず、データベースに情報を登録しない飼い主もいる。地球生物会議の野上代表は「保健所が保護した犬のマイクロチップの中身が空っぽだったというケースを何度か聞いた。ただ埋め込めばよいというものでなく、引っ越せば住所の変更登録も必要になる」と注意を呼びかける。
同会議では「迷子の犬を家に帰そう」プロジェクトとして、首輪に犬の鑑札と一緒に付けられる「迷子札ホルダー」を作製し、装着を呼びかけている。これなら、マイクロチップに抵抗感のある飼い主にも受け入れられそうだ。