無理せず、維持する難しさ | もつ焼き松っちゃん おかみの記

無理せず、維持する難しさ

 先日、某テレビ局から、取材を申し込まれた。即座にお断りをした。

夫が三度の入退院を繰り返し、一昨年は本当に閉店を考えた。それ

でも店に対する愛着が強かったのだろう。「お店、閉じようか?」との私

の問いかけに「俺はやるよ」の一言。


 開店して30数年を経ても同じ商品をウリにして、元気に頑張れる、

そのこと自体がうれしい気さえする。バブルがはじけ、客数が減り、ど

うするかと悩んだ時も、「ウチはもつの専門店だ、メニューの工夫など

要らない。もつを前面に出すんだ」


 この彼の一言で私の腹も決まった。若者向けの見かけコジャレタ店

はいくらでもある。でも、味はどうもイマイチ、というのはよく聞く話だ。


 本物にこだわる、その姿勢はやっぱり職人だと思う。「もう少し、愛想

が遣えないものか?」と思うことはしばしばだが、それを言うと機嫌が悪

くなるので、最近はあまり言わないようにしている。


 齢を重ねるごとに少しずつ衰えを見せ、元気に店に立てるのもそんな

に長くはないかもしれない。そう思うと、この店は彼の店だから、好きに

すればいい、とも。


 そんな体力との戦いのような毎日なのに、「テレビ見て来ました」との

大勢のお客様を相手にとても体が続かない。そこで、三度も承諾のため

にご来店いただいたのだがお断りをした次第である。


 猛暑の今夏も健康に留意し、無理せず頑張る、これでいきたい。