店の暖簾が新しく | もつ焼き松っちゃん おかみの記

店の暖簾が新しく

 変色し、年季の入った暖簾に「合羽橋に行くか?」との夫の一言。

そろそろ替え時だと思い、いつにしようか、と思案していたところに

常連のお客様より、会社の宣伝用に作ってくださるというありがた

いお話を頂戴した。名前入りの暖簾2枚と大判のコースターまで

無料で作っていただき、老朽化した店が華やいだようで、うれしい

限り。


 親しくしているご近所の居酒屋さんが、新調の暖簾に気づき、注

文したいので連絡をとってほしい、とのこれまたうれしい話。早速の

注文に会社にも喜んでいただき、一番のお返しができたようで私も

幸せな気分に浸った。


 以前、暖簾を求めに合羽橋に出向いたが「もつ焼き」と書いた暖

簾が見当たらない。聞くところによると、もつを自分でさばく職人が

激減し、手間のかかるもつ焼き屋を経営する人がいなくなったという。

「焼鳥はあるんだけどね」と言われ、特注すると高額になるため、無

地の暖簾を購入した。


 自分でさばいて串にさす作業は確かに大変な労力がかかる。若い

頃とは違い、年齢が嵩むほどに体には堪える。串に刺さった冷凍モ

ノを仕入れ、仕込みなしで経営する店が増えている中で、手さしを貫く

のも職人としての夫の誇りだと思う。


 先日、来店されたお客様が「大将は職人だね。職人は儲けを考えた

ら職人じゃなくなるんだよね。今時珍しい存在ですよ」と言って下さった。

夫に聞こえたのかどうかは分からない。聞こえたとしても黙っている人

だから、やっぱり職人なのだろう。


 そう思いつつ、二人で仕込みをする時間が少しでも長く、と願う昨今だ。