親しき仲にも礼儀あり
こじゃれた店が下町にも増え、当店のような「リフォームの必要あり」
というような店は本当に少なくなった。
「いいんだよ、これが」と言って下さるお客様に支えられて不況の波も
苦にならずに楽しく仕事に向かえることに日々感謝。
先日、常連のお客様が「自分で稼いで飲むからおいしいんで、おごら
れっぱなしで平気というのは正直ムカつくよね」とポツリ。
返答を求められたので「私もそう思うわ。人から何かをしてもらうことが
当たり前になってはいけない。親しき仲にも礼儀あり」と答えた。
俗によく言う「酒の席だから」もほどほど。限度というものがある。人様に
不快感を与えてはやはりレッドカード。「つまらないことをいうな」と言いた
い気持ちも分かるが、そのつまらないことで親の教育や家族まで云々さ
れるのも現実だ。ゆき過ぎたら心から謝罪する、ご馳走になったらきちん
とお礼を言う。この当たり前のことができない人があまりに増えている。
こんなことを言うと、私もずいぶん年をとったのかな? と思うのだが、これ
は時代に関係ないはず。
1週間ほど前、結婚が決まったカップルが挨拶かたがた来店。親友が
「驚いたよ。飲みに行くと言うと彼女が飲み代をきちんと渡すらしいんだ。
それって、いいよね。その配慮が可愛いよ」と。
微笑ましい瞬間だった。人間が大人へと自立していく過程は見ていてと
ても新鮮だ。