三番叟から始まる

2008年の和泉会別会。


装束着けは

約1時間前。


以前に話した

「死ぬ覚悟」の下着に

襟を重ねる。


三番叟は紅襟と白襟を重ねる。

(この紅白襟を重ねることは、

宗家のみが用いるものです。)


9歳の披き(披き・初演の事)以来

多くの演じる機会に恵まれてきたが

この日はまた、

一段違う緊張感。


嫡男の門出。


宗家として

師匠として

そして、父として。


父から受け継いだ芸を披露して

門を大きく開けてあげたい。と。



生前、父に

三番叟を演じるとき

「お前、まだ緊張するか?」

ときかれました。


当然の事。


でも父は

「ワクワクする。」と。


緊張をしないということではない。


最近それが分かってきた。



息子の初舞台。

今、用意して上げられる

最高の舞台を!

晴れがましく幕を開けたいと・・・。



「三番叟」   和泉元彌

        千歳 吉浪洋一郎(直門弟子)

(お囃子の先生方も重鎮をお迎えすることができました。)



さて、三番叟が終われば

舞台上は

三宅藤九郎20分の独り舞台

平家物語「扇の的」のくだり

4役を語り分ける

狂言の語りの集大成。



舞台裏では

小猿の装束着けが始まり

狂言師和泉元聖の誕生です。


グレーの猿皮に袖を通し

両の足を通し

頭巾をかぶり

手袋・足袋

要所要所を細かく

糸針でとめ


小さい元聖の肌がどんどんと見えなく

なっていきます。


子供心に自分の肌が包まれていくと

普段感じることの無い緊張感を感じたものです。

自分の肌の感触が無いのですから・・・。



そうこうしている内に

舞台は

和泉淳子・和泉慶子の

女性狂言師親子の共演

「痺(しびり)」に。


舞台から大きく響く子どもの声を聞きながら




楽屋では

顔だけを残し

全身を猿皮に包まれ

しばらくの間を待ちます。


元彌のアスナロぶろぐ
(舞台ではご覧いただけない

顔の見える小猿の写真)



さて、「痺」が終わると

10分間の休憩



その間に娘は装束を着けます。



急がなければいけませんが

縁者の気が焦るようにはできません。


丁寧かつ速やかに


「お姉ちゃん先に頑張ってくるね。」
元彌のアスナロぶろぐ


藤九郎が相手を務めてくれた

「伊呂波」


さ、

小猿も最終チェックをして・・・と

タイミングよく

珍しいショットが


元彌のアスナロぶろぐ



小猿に近づく私。

う~。緊張してるのが分かる??




念には念をいれ
元彌のアスナロぶろぐ
とめる。
元彌のアスナロぶろぐ
とめる。




綺麗な舞台となりますよう

整えるのは

師匠の役目。


用意された舞台の上で

演じきって帰ってくるのは

自分の力。



舞台に出たら・・・

何もして上げられないのだよ・・・。





後は面をつけるのみ


舞台は待ってくれません。






舞台上に目を配り

同時進行の舞台裏


後は「靭猿」一曲残すのみとなりました。