本番の舞台での


稽古・・・・


手を引いて舞台に向かいました。



幕から始めて踏み出す一歩


その寸前に




この一歩が最初の一歩・・・


自らで踏み出してほしいと


手を放しました。






臆する事もなく


まだお客様の入っていない舞台に


狂言師として歩みを進めていました。


親子で


橋がかりを歩いて


改めて


橋がかりってこういうものかも・・・


と思いました。




2つの世界の橋渡しをしているという事で


付いた名でもあります。




親の後をついて


息子もその橋を渡りました。




狂言師としての人生の始まりです。




この幕が下りるときは


唯一つ・・・・。




その時は僕もいないでしょう。




幕引きを手伝うことはできません。




ごめんね。




一人で・・・・


いや、お前の息子が


ちゃんと幕を下ろしてくれるんだろう。




その前に


お前が僕の幕を下ろす役だぞ。




父の締めくくりを


僕がしているように。




同じことの繰り返し。




日・月・年・代を重ねて


繰り返していくもの。




そうやって人の心が、芸が


一筋の糸のように紡がれてきたのです。




昔から伝わってきたのです。




だからこそ


「伝」「統」なのです。




和泉流宗家・和泉流600年への


幕開けです。




そして、


開場一時間前


誰もいない舞台で


師弟は向き合ったのでした。