
おはようございます!すり鉢屋元重製陶所の元重慎市です。
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よくすれるすり鉢のポイント①
モノが溢れていると言われている現代において、すり鉢も例外ではないようです。
昔はすり鉢といえば、赤茶色の「ザ・すり鉢」1択だったかと思うのですが、

今はネットで調べてみても、形や色、様々なデザインのすり鉢が出てきます。
色々な種類のすり鉢があるので、お皿のようにデザインの好みで選びたい方は全然それでも構わないと思うのですが、
とはいってもすり鉢は『調理器具』なので、是非とも機能性で選んでいただきたく思っております。
すり鉢の機能性といえば、何といっても『よくすれること』。
ということで『よくすれるすり鉢』について前回に引き続きお伝えいたします。
前回の記事では、よくすれるすり鉢のポイントの1つ目として、櫛目(内側のギザギザ)をつける方法についてお伝えいたしました。
型押しでつける場合と、手作業でつける場合があるのですが、
型押しで付ける場合は櫛目が丸くなってしまい、手作業でつけると櫛目を尖らせることができます。
この手作業でつけた尖った櫛目がすりやすいすり鉢の1つ目のポイントでした。
今回お伝えする「よくすれるすり鉢のポイント2つ目」は、
手作業でつける場合の櫛目の良し悪しです。

前回、いいとお伝えした「手作業でつけた櫛目」
しかし、手作業だからこそ、ちゃんとしたやり方で櫛目をつけないと、かえってすりにくいすり鉢になってしまいます。
ポイントは2点です。
①櫛目をつける時の力加減
②道具のメンテナンス
①櫛目をつける時の力加減について
これを説明するためには、まず、すり鉢の櫛目がどのように付けられているかを説明しないといけません。
機械と石膏型を使って、すり鉢の外側の形を作ります。
この時点ではまだ櫛目がないのでただの器です。


そして、この専用の金属の道具を使ってギザギザをつけて行きます。

くし目をつける作業では、さきほどできた器にめかきを押し付け、粘土をかきとるようにして、くし目をつけていきます。

1箇所くし目をつけたら、器を少しだけ回転させ、新たに次のくし目をつけます。このとき、前に付けたくし目の一部を消すようにして新たなくし目をつけます。



これを繰り返して、器を1周させて内側の全体にくし目をつけます。

では、本題に戻ります。
前に付けた櫛目の一部を消すようにして次の櫛目を入れる作業。
この作業の力加減が難しいことはなんとなくわかっていただけますでしょうか?
力が弱いと前の櫛目を十分消すことができずに、かすれたような見た目になってしまいます。

こうなると見た目も全然だめなので、この状態で売られているすり鉢はほぼありません。
逆に力が強いとどうなるか。
前の櫛目をきれいに消すことができるので、見た目は全然きれいです。

見た目はきれいなので、この状態で売られているすり鉢はけっこうよく見かけます。
見た目はきれいだけど何か問題でもあるの?と思われました?
実はこのすり鉢
すり鉢の中に段差ができていて、すりこ木が引っかかってしまうのです!
前の櫛目と次の櫛目の境目のこの部分ですね。
この部分に段差ができてしまいます。

正確にいうと、右に回すときは段差を下るようなイメージになるので、すりこぎはスムーズに回せますが、
左に回すと、段差にすりこ木が引っかかるので、とんでもなく回しにくくなります。
一時期、一般的なすり鉢は右利き用だから右回しでお使いくださいと言われていたのはこれが原因です。
なので、見た目もきれいで、なおかつすりやすいすり鉢を作るためには、
強すぎず、弱すぎず、絶妙な力加減で櫛目をつける必要があります。
自分でいうのも変なのですが職人技ですね。
私自身、売り物になるレベルの櫛目をつけれるようになるまで1年かかりました。
今すり鉢を作り始めて3年くらいになりますが、ベテラン職人さんに言わせると私なんかまだまだのようです。
ちなみに、かすれが全くなくて、かつ段差も全くないすり鉢というのが理想なのですが、
すべてのすり鉢で寸分の力加減の狂いもなく作るというのは現実的には不可能です。
そこで、元重製陶所では、あえて少しだけかすれが出るように力加減をコントロールしています。
写真のように、櫛目と櫛目の間に1~2列分くらいだけかすれが出るところを狙っています。

これが、元重製陶所として、かすれが少なく、かつ段差もない、すりやすいすり鉢を追求した形です。
まれに、お客様からこのかすれが不良品ではないかという声をいただくことがあるのですが、
このかすれをなくすために、これ以上力加減を強くすると段差ができてしまい、すりこぎがひっかかるすり鉢になってしまうので、多少のかすれがあるものについてはどうかご理解いただけると幸いです。
ちなみに、型押しで作られるすり鉢には、このかすれがありません。
なので、どうしてもかすれが許せないという場合には、型押しで作られたすり鉢の方が合っているかもしれません。
ただ、前回の記事でお伝えしたように、型押しで作られるすり鉢は、櫛目が尖っていませんので、するときに時間と力がかかります。
よくすれるすり鉢のポイント①
このあたりを考慮に入れて、すり鉢を選んでいただけると幸いです。
では、絶妙な力加減でちゃんと櫛目がつけられているかどうかはどうすれば見分けられるのでしょうか?
結論から言うと、お店に行って自分の手で触って確かめるしかありません。
どうやって確かめるかというと、
すり鉢の内側を手のひらを左右に往復させるようになでます。

その時に、ほとんど段差が感じられないすり鉢はちゃんと櫛目がつけられているすり鉢です。
もし、なでたときにどちらかに段差を感じるようなすり鉢はすりこ木が引っかかるすり鉢なので避ける方が無難です。
ちなみに元重製陶所のすり鉢は、この「段差が少ない」という点に一番こだわって製作しております。
どのすり鉢を手に取っていただいても、段差を感じられないように作っておりますので安心してお選びください。
②道具のメンテナンスについて
ポイント1点目がだいぶ長くなってしまったのですが、もう1点ポイントをお伝えさせてください。
それは道具のメンテナンスです。
道具とは、こちらの櫛目をつける専用の道具のことです↓

こちらの道具、金属の板をやすりで削って自作しております。
この道具、実は奥が深いのです!
企業秘密で詳しくはお伝えできませんが、この道具がいまいちだと良い櫛目はつけられません。
櫛目の大きさがバラバラだったり、深さがバラバラだったりしてしまいます。
そしてそれよりも大事なのがメンテナンスです。
この道具を粘土に押し当てて、粘土を削り取るようにして櫛目をつけるのですが、

何度も行っていると金属の道具の方がへたってきます。
へたってきた道具をそのまま使うと、櫛目が丸くなります。
丸い櫛目は前回の記事でもお伝えしたように食材をしっかりととらえることができず、うまくすれません。
ですので、このめかきは常に鋭い状態を保つようにメンテナンスする必要があります。
元重製陶所では約3ヶ月に1回のペースでこの道具をやすりで研いで鋭さをキープしています。
では、ちゃんと道具がメンテナンスされて尖った櫛目になっているかどうかはどうやって見分けるか。
これも触って確かめてみるしか方法はありません。

丸い櫛目は触ったときに引っかかりが少なく、尖った櫛目は触ったときによく引っかかる感じがします。
とてもあいまいな表現しかできないのが申し訳ないのですが、こればかりはご自分で確かめていただくしかないのです。
色々なすり鉢が置いてあるところで触り比べることができたら一番いいのですけどね。
元重製陶所では、先ほどお伝えしたようにきちんと道具のメンテナンス行っていますので、
自信をもって尖った櫛目のよくすれるすり鉢をお届けいたします。
以上が「よくすれるすり鉢のポイント②」となります。
今回は見分け方が自分の手で触ってみないとわからない点が多かったので、見分ける自信がないという方がいらっしゃるかもしれません。
そんな場合には、是非、元重製陶所のすり鉢を選んでいただけると幸いです。
元重製陶所のすり鉢は手作業で作るため、手間がかかるので、百円均一では売っていません。
ただ、手作業で作ってる割にはそこまで高いわけではなく、日常使いのサイズであれば何百円~二千円くらいで購入いただけます。
是非オンラインストアも覗いてみてください。
https://www.iwamiyaki.com/
ちなみにamazonにも出品しておりますので「すり鉢」もしくは「元重製陶所」で検索してみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました!