目をつむれば | 一冊の詩集

一冊の詩集

人生終わるとき一冊の詩集が出来上がっていたら。
一日一日を大切に。

振り返れば無数の足跡が見えます。誰かが痛んでくれたからここがあります。

「今」を噛み締めながら、一日一日歩きます。

一刻も早く必要な場所に必要なものが届けられますように。

どうぞ、心澄む一日でありますように。

 

 

「目をつむれば」

 

  a

 

音を立てるのは

かすかに

 

秒針と水滴と

しゅん馬のいななき

 

聞こえぬ音を 

たぐれば

 

命を失うことの美しさ

命を長らえることの美しさ

 

命が震えるその瞬間

歴史がひとつ産道をぬける

 

静寂にしぶきを上げ

ざんざと音を立てるもの

 

目の前を流れ流れ

かき抱かん命という音

 

人類はつながれてきた

無数の場面の連なり

 

どのひとつにも

いのちの痕

 

  b

 

ゆれた

 

そんな

 

気がして

 

あなたが

 

過ぎた

 

  *

 

どこから来たのか

セピア色の一枚

 

悲しみと

苦しみと

 

歴史と

人生と

 

あっ

かたんと動いたような

 

風が静かに

抜けていった

 

  *

 

風が

吹いた

 

草が

光った

 

心が

鳴った

 

大地は

あなたを

 

いのちと

呼んだ

 

  c

 

私はあなたを

知っています

 

外は

光が眩しいけれど

 

片すみで

いつも

 

あなたの心を

咲いています

 

やさしい香り

ほのかに いちりん

 

  d

 

あなたたちには

見えるのね

 

あの雲の

むこうに

 

あの流れの

むこうに

 

あの光の

むこうに

 

何かが

住んでいるのが

 

あなたたちには

聞こえるのね

 

よごれた

なかに

 

みじめな

なかに

 

よわさの

なかに

 

平和でおだやかな

いのちの姿

            motomi

 

※ 忙しいときほど、心の声に耳を澄ませて。