まず なにがあるのか | 一冊の詩集

一冊の詩集

人生終わるとき一冊の詩集が出来上がっていたら。
一日一日を大切に。

 「まず なにがあるのか」

 

   Ⅰ

 

人間の心の奥には

なにがあるのか

 

なにを求め

なにに惹かれるのか

 

美しいもの

清らかなもの

 

やさしいもの

なごやかなもの

 

産まれた時に

聴いていたメロディ

 

感じていた気配

包まれていた空気 

 

   *

 

そして

一気にこの世に出る!

 

与えられていないものは

なに一つない

 

樹々があり

水があり

 

土があり

空があり

 

太陽があり

星があり

 

人間は

すべてを受け取ることができる

 

   *

 

嘆きはどこから産まれるのか

疑いはどこからやってくるのか

 

嫌悪は 憎悪は

正義は 断罪は

 

いつ なぜ

支配するのか

 

問うて 問うて

目覚めて 問うて

 

手があり 足があり

内臓があり 呼吸があり

 

なぜ それに

気づかないのか

 

   *

 

だれもが 人間

だれもが いのち

 

まず

なにがあるのか

 

なにをしてもいい

しかし 

 

いのちにだけは 

触れるな

 

いのちあるから

苦しむことができる

 

いのちがあるから

愛されることができる

 

   Ⅱ

 

微かに

闇に響く金属音

 

敵か

味方か

 

耳を

澄ませるばかり

 

いのちは

いつもどこかで灯ろうと

 

ああ

爆音の地

 

ああ

路地裏の片隅

 

ああ

孤独の一室

 

いま いのちよ

生きよ

 

   *

 

感じたい

この魂

 

いつも

安らぎをここに

 

いのちの

イメージ

 

まず心に

浮かぶように

 

土 水 光に触れることができる

なんという恵み

 

階級も 宗教も

人種も 文化も

 

超えて

いのちはある

 

   Ⅲ

 

祈られる

平安

 

守られる

幸い

 

ここにいていいのだと

心の奥が

 

ふと

翳りが忍び寄るとき

 

どの日だったか

思い出せないほど遠くに

 

悲しみは潜み

痛みは隠され

 

骨の一本一本を

むしばむとき

 

それでも

流れるしらべ

 

ここにいていいのだと

聴こえてくる

 

祈られる

平安

 

守られる

幸い

 

ここにいていいのだと

心の奥が

             motomi

 

※ 今日も順調に悩みは訪れます。その度に「始まり」を確かめるのです。