夏を想う | 一冊の詩集

一冊の詩集

人生終わるとき一冊の詩集が出来上がっていたら。
一日一日を大切に。

「暑いですね」が挨拶のこのごろ。気づかないうちにいのちの危険に晒されています。

誰もが助けられて生きていることを思い出すときかもしれません。

声を掛け合って乗り切りたいですね。

どうぞ、心和む一日でありますように。

 

 

「夏を想う」

 

  a

 

雨戸を とじると

ジジ――と

 

せみが一匹

とび立った

 

真夜中に

せみは 静かに

 

ぬけがらに

帰る

 

  *

 

われたかけらを

かき集めれば

 

今日の

ことばができあがる

 

大人になると

見えてしまう

 

どうしても 

上手く行かない人生

 

  *

 

そして

大人はがんばってしまう

 

そして

自分を信じることができない

 

夢中で

駆けていく子どもたちのように

 

なぜ あっけらかんと

生きられないのでしょう

 

  *

 

にっちもさっちも

行かなくなったとき

 

ギリギリで

息をするとき

 

無口で

ほほ笑みもないとき

 

いちりんの花に

祈りがあることを知るのです

 

  *

 

大人になると

なぜかふと

 

なつかしくなる季節が

ありませんか

 

さまざまな出来事を

越えて

 

夏にひと時

思いを馳せるのです

 

  b

 

校庭の片隅に並ぶ

朝顔のやさしさ

 

子供たちの夢を

抱き止める母の微笑みのよう

 

  *

 

桜の茂り濃く深く

しゃがむ妹の姿 いとしや

 

誰もいない校庭が

カランと鳴った

 

  *

 

茂る深緑

流れはゆるりと音を鳴らす

 

雨で

さらに深さを増して

 

  *

 

川は

滔々と姿を晒さん

 

日に当たられて揺れる葉の

何を思って生きるのか

 

  *

 

ユトリロならどう描くだろう

あの大木を

 

見上げてひとり

橋の上に吹かれているよ

 

  *

 

この摩天楼を

誰が描くのか

 

大空に放たれん

永遠の色に染められながら

                motomi

 

※ 道が見えなくても、足跡の一つ一つが励ましになっています。