大地のなかで | 一冊の詩集

一冊の詩集

人生終わるとき一冊の詩集が出来上がっていたら。
一日一日を大切に。

ジメジメした気候、見上げても空はどんより。

そんなとき心をハッとさせるもの。

紫陽花のあの輝きはどこから来たのでしょうか。

見回せば私たちはいつも励まされているような気がして。

どうぞ、心伸びやかな一日でありますように。

 

 

「大地のなかで」

 

  a

 

買い物ぶくろを

玄関におくと

 

すぐに私は

下駄をつっかけ庭に出る

 

葉脈がすけて 青い情熱

いかり草

 

紅いつるを伸ばし 土を這う旅人

雪の下

 

切なくむすんだ 恋物語

山芍薬

 

息を すう

息を はく

 

大地とわたしが

ひとつになる

 

ふり向くと

落ちてゆく夕陽のなかに

 

じょうろを持つ父が

笑いながら立っていた

 

  *

 

人間は

自然と共に描かれるのが

 

似合っているような

気がして

 

  b

 

陽が長くなった

そしてすとんと闇になる

 

いつだったろう

どこだったろう

 

蠅が いっぴき

何かを探すように

 

いつまでも 電球を

めぐっていたのは

 

木枯らしは去った

これからは白い太陽の季節

 

そして希望は

ガラス窓の薄日のように

 

いつも

やさしく射し込んでいる

 

感じながら

暮らしたい

 

大地の果てまで

そよぎながら

 

  c

 

大きな雲

横並びに

手を広げる

 

風が

素肌に

心地よく

 

  *

 

今日は

保育園も

ひっそりで

 

片すみに

なんという名か

いつか見た花

 

  *

 

青竹が

空に突き刺すように

まっすぐに

 

あなたたちは

決して

諦めない

 

  *

 

この風景

老いた二人が

手をつないで歩く姿

 

後ろから見送った

いま ふと

心温められて

 

  *

 

緑 爽々

大地に吹かれ

幾ばくかの花びら可憐に揺れる

 

見上げれば摩天楼

ひとひらを

慕いつつ 慕いつつ

                motomi

 

※ 聴いて、感じて、こだまする、今日も出会いが待っています。