五月のころ | 一冊の詩集

一冊の詩集

人生終わるとき一冊の詩集が出来上がっていたら。
一日一日を大切に。

被災地でまだまだ不自由な暮らしを強いられている方々、一日一日をどのような思いで過ごされているのか。目を世界に向ければ、さらに悲惨な光景が広がります。

自分のことで精一杯という前に、まず今を共に生きる一人一人のために祈れたらと願います。

一刻も早く、必要なものが必要な場所に届けられますように。

どうぞ、心なごむ一日でありますように。

 

 

「五月のころ」

 

  A

 

ガラスの器に

真っ赤なほっぺ

 

つややかな

ほほ笑みを

 

ちょんと

つつく

 

さくらんぼに映る

あなたのすがた

 

いまも

校庭の片隅で

 

歌をうたいながら

花びらをひろっている

 

五月の

この日

 

少女は

柳の下で待ちわびていた

 

この世に

あなたがやって来るのを

 

  B

 

この道は一本しかない

人生という道

 

人は歩く

与えられた道を

 

じっと自分に

耐えながら

 

  *

 

地上に上がると

ふっといい匂いがした

 

沈丁花は通り過ぎたころ

ほのかに漂う

 

つつましく咲く花は

人生にやさしい

 

  C

 

シャッターをあける

銀色の雲に向かって走り始める

 

鳥の群れが矢印になって

向こうの空に飛んでゆく

 

追いかけるように竹やぶの上を

一羽の鳥が横切った

 

  *

 

間に合うでしょうか

間に合わないかもしれません

 

それは

そのとき

 

いまは

進め

 

  *

 

生きるって

信じつづけることかもしれません

 

今日も夜が明けました

信じられています

 

これほど

にも・・・・

                 motomi

 

※ 足あとの一つ一つが、今を共に歩いています。