香る季節 | 一冊の詩集

一冊の詩集

人生終わるとき一冊の詩集が出来上がっていたら。
一日一日を大切に。

勝つ人がいる、負ける人がいる、それでも最後は称えあっている。

そんな光景を心に灯しながら現実を歩きたい。

一日一日の積み重ね、身近な一つに心を込めて。

どうぞ、心豊かな一日でありますように。

 

 

「香る季節」

 

  a

 

あなたたちは

産まれた

 

こんなに

やさしく

 

こんなに

気高く

 

香り立つ

いちまい

 

手に取り

口づければ

 

まるで

心の芯に

 

涙を

垂らしてくれるよう

 

さあっと

風が

 

いのちを

吹いて・・・・

 

  b

 

どこからきたの?

 

庭に下りて

ひとつひとつに

といかける

 

薄もも

ぐんじょう

白サギ色

 

うつむいたり

ほほえんだり

ハミングしたり

 

どうしてかしら?

 

とんとん

石を渡って

梅の木の根もとまで

 

外の空気は

冷たいでしょう

この世はずいぶん辛いでしょう

 

あなたたちが 

ふれてくれると 

やさしくなるわ

 

おしえてくれる?

 

かくれず 

ぶきように

生きたいの

 

うまれたとき

感じていた

そのまんまを

 

そこに

咲いているだけなのに

心がいつも呼びかけている

 

  c

 

洗濯物をたたんでいると

指先にかすかな音が聞こえる

 

あの日 あの道

無邪気に走り寄ってくる子どもたち

 

エプロンをかけたまま

両手であなたたちを抱きとめる

 

いく度も 愛されて

人生は洗いざらしのシャツのように輝いてゆく

 

  *

 

青竹の茂りを

バス道がうねる

 

向こうから

腕まくりして自転車をこぐ青年

 

あなたは なにを

目ざしているのかしら

 

額の汗が

まぶしくて

 

  *

 

だれもが

ふと感じる

 

かすかなものを

ひろいながら

 

人生を

育てているのかもしれません

                 motomi

 

※ 変わりない日常。一番身近なものに目を止めて。