古畑任三郎のラスト、古畑も犯人も去ってスタッフクレジットが流れるところはどうしていつも延々と誰もいない部屋を映し続けているんだろうと思ったことがある。事件のすべての人間が立ち去ったこの部屋を見つめ続ける語り手(眼)は誰なのか。それは被害者、殺された人間なのではないか。


殺された人間が最後事件の片づいた部屋を見つめ続けている。だから古畑の謎解きシーンにはいつも3人いるんじゃないか。古畑と犯人と殺された人間が。殺された人間はその場にとどまり古畑も犯人もいないすべてが終わった部屋を見つめ続けている。そしてドラマの幕のすべてが終わると共にその眼もきえる。


古畑が自殺しようとする犯人に向かって語ったことがある。私はこれまでたくさんの殺されたひとたちを見てきました。でもかれらだって死にたくて死んだわけじゃないんです、と。古畑任三郎は壮大な鎮魂のサーガのようにも思える。しにたくてしんだわけじゃないひとの。めがきえるまで。3人でいる。