『シン・ゴジラ』で面白かったのがゴジラをいったん幼生として幼稚化=退化させたあとで、物語内で立派に二足歩行できるまでに進化させた所だ。これでは観ているだけでゴジラに対して〈親目線〉になってしまうではないか。しかもはじめからナウシカの王蟲みたいにばんばん体液を出すので同情してしまう

結局『シン・ゴジラ』では何が悪なのかよくわからない。ゴジラなのか人間なのか原子力なのかアメリカなのか政府なのか。何かの立場が極端に悪として構図化されずそれぞれの立場でも割れるよう描かれている。ただわかるのは絶対的犠牲者がいなければ対処できない事態がこの日本では起きてしまうという事

私はブームが終わった後に『シン・ゴジラ』を観に行ったので、映画館はすかすかだったが、おじいさんやおばあさんがたくさんいた。みんながゆっくりとアイマックスシアターの高いところへ険しい山をのぼるように杖を握りのぼっていった。あれこれ見たことある風景だなと思ったら、『風立ちぬ』だった。