あなたがわたしのまえにあらわれたとき
あなたはめがねをかけていた

あなたがわたしをながいあいだ
まるで植物の生長をみつめるように
だきしめてくれていたときも
あなたはめがねをかけていた

あなたがとてもいそいであわて
わたしのへやにあらゆるものを
おきわすれていったときも
あなたはめがねをかけていた

あなたがさよならといって
踏切の音がカンカン鳴ったときも
あなたはめがねをかけていた

まちですれちがって
あなたがわたしのしらないかおをしていたときも
あなたはめがねをかけていた

あなたがはじめてわらったときも
あなたはめがねをかけていた

ゆめのなかで
あなたがわたしのてをひいていたときも
(それはきいろいみちだったが)
あなたはめがねをかけていた

あなたがめがねをかけていないふりをしていたときも
あなたはいつもめがねをかけていた

ねむっているあなたのかおをわたしはみていた
せかいのすべてのときがとまっても
あなたはめがねをかけていた