短歌と俳句はよくひとまとめにして言われることがあるのですが、ずいぶん違う。
どこが違うかというと、わかりやすい例でいいますと、まず作者の質、人格みたいなものがずいぶん違うような感じがします。
つまり短歌的人間と俳句的人間があって、それは別人種だという感じがします(笑)。
たとえば席題という伝統があって、題を出して歌人と俳人で一緒につくったことがあるのですが、そのときに俳人だと、面と向かい合ってその場で作品をつくります。
つまりだれかに見られていても平気なんです。
歌人はさあつくろうということになると、すぐ立ち上がって、どこか部屋の隅のほうに行き、一人の世界に入ってつくる。そういうところがある。だから、短歌というのは作者の「われ」というか、「わたくし」というか。そういうものにもすごくこだわっている。
その「われ」という作者の主体の強さでは現代詩に近い、自由詩に近いタイプの作者なのかもしれないと思うのです。

   坪内稔典『現代にとって短歌とは何か』