自己の再帰性(自己省察に基づく自己)に関する議論で、もっとも端的に「現代性」を示す議論は、他者を欠いたまま「自己」が形成される現代的状況を取り扱った議論である。
鈴木謙介はミード的な他者を経由して自我が形成される働きを「反省性」と呼ぶ一方、他者との関係を欠いた自己省察のあり方を「再帰性」と呼んで区別している。
後者の自己は他者を要せず、もっぱら自己の中で作り出した自己イメージを、自ら踏襲して形成される。
他者を欠いた自己イメージ形成を可能とするのは、SNSやネットショッピングなどといった、ITテクノロジー環境である。

    門田岳久『巡礼ツーリズムの民族誌』