アダムとイヴを造形したのは
旧約のわがままで傲岸な神だったが、
その神さえも粘土で造形したのはヴィントンだった。
クレイアニメは、俳優が決して魅せることのできない
襞の奥深さというものをみせてくれる。
だからこそ、再見するたびに、
映像は新しくなっていく。
もちろん、アダムとイヴの旧約世界観を
脱構築し、エデンの園をイヴというトポスに
転置してみせたトゥエインの存在も大きい。

この映画、
台詞は全てトゥエインの作品から
もしくは作家自身の言葉。

これ、粘土のアニメーションっていうか
クレイアニメーションで
主人公をトゥエインとトム・ソーヤでたてて、
マーク・トゥエインのいろんな文学作品を
たくみに折衷させている。
で、そのなかの劇中劇である
アダムとイヴの日記っていうのが
すごくよくできてる。

イヴがこの世を去ったあとに
アダムが空を見上げながら

 彼女のいた場所こそ、
 私にはエデンの園だ。

ってつぶやくんだけど、
これは聖書の創世記を
文学的にジャンプしてみせた瞬間だとも
思うんですね。
つまり、聖書にとっては
神が設けられた園こそ、エデンの園であり、
それをぶちこわしたのはイヴに他ならない。
けれども、アダムにとっては
そんなことはどうでもいい。
それよりも、かけがえのない時間を
彼はイヴと生きた。
そうしてそれこそが
彼にとっての楽園であった。
ここではそういう聖書の読み替えが行われている。
つまり、ひとにとって
エデンの園はいつもそこにあるものであり、
かつ生きられるものでもあるんですね。
世のなかにはすてきな名台詞がたくさんありますが、
君の瞳は百万ドルなんかよりも
よっぽど含蓄のある恋愛名台詞だと
思います。



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