- チェーホフ (岩波新書)/浦 雅春
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★★★☆☆
トルストイとドストエフスキーという対極にある二人が
「表象の嵐」として過ぎ去ったあとに、
取り残されたようにチェーホフが生まれる。
ぼくはチェーホフのコンセプトは、
「にもかかわらず」の哲学であったと思う。
憂鬱で生きるのが苦しく、
自分は取るにたらない存在で、
過去も現在も未来もうとましい。
「にもかかわらず」、生きるのだ。
ワーニャもロパーヒンも、そうだ。
父の不在、さかさに届く手紙=呼びかけ。
それでも「かれら」は生きぬき、
いま・ここに生きている「われら」という他者に対して
たえず呼びかけを行っている。
明らかにチェーホフは、
後期カーヴァーの「愛読者」であり、
後期の漱石・太宰テクストを「書き直し」ているのだ。
ねえ、おじさん、
「それでも Neverheless」生きていきましょうね。
つらく、はてしないその日々を、
生きていきましょうよ。
いつか、ほっと息がつけるんだわ。
わたし、こころの底から燃えるように、
そう信じているのよ
- ワーニャ伯父さん/三人姉妹 (光文社古典新訳文庫)/アントン・パーヴロヴィチ チェーホフ
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