チェーホフ (岩波新書)/浦 雅春
¥735
Amazon.co.jp


★★★☆☆


トルストイとドストエフスキーという対極にある二人が

「表象の嵐」として過ぎ去ったあとに、

取り残されたようにチェーホフが生まれる。



ぼくはチェーホフのコンセプトは、

「にもかかわらず」の哲学であったと思う。

憂鬱で生きるのが苦しく、

自分は取るにたらない存在で、

過去も現在も未来もうとましい。

「にもかかわらず」、生きるのだ。

ワーニャもロパーヒンも、そうだ。

父の不在、さかさに届く手紙=呼びかけ。

それでも「かれら」は生きぬき、

いま・ここに生きている「われら」という他者に対して

たえず呼びかけを行っている。

明らかにチェーホフは、

後期カーヴァーの「愛読者」であり、

後期の漱石・太宰テクストを「書き直し」ているのだ。



ねえ、おじさん、

「それでも Neverheless」生きていきましょうね。

つらく、はてしないその日々を、

生きていきましょうよ。

いつか、ほっと息がつけるんだわ。

わたし、こころの底から燃えるように、

そう信じているのよ


ワーニャ伯父さん/三人姉妹 (光文社古典新訳文庫)/アントン・パーヴロヴィチ チェーホフ
¥760
Amazon.co.jp