惑星ソラリス [DVD]
¥4,480
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★★★★★

この『惑星ソラリス』はSFでありながらも、
語りそれ自身がほとんどSFに興味を示していません
(検閲を通すという政治的理由もあるのですが)。


たとえば、
冒頭に5メートルの赤ん坊をみる宇宙飛行士の
挿話が用意されていますが、
カメラが関心を示しているのは、
安静を欠いた飛行士の表情ばかりであり、
画的に盛り上がるはずの、非現実なものには
興味を示さず、
ゆがんだ現実を
ショットの中心にとどめつづけることで
静謐な不穏がたたえられていきます。


非現実的なものが、
視覚としてとらえられうるのは、
ソラリスの海ではあるのですが、
その海もやはりSF色というよりも、
人間の意志=意思が
及びもしない領域の表象として
的確すぎる対象であったために
力を注いでいます、
というタルコフスキーの
ほくほく顔が眼に浮かぶようです。


SFというのは、
スペクタクルを用いて、
いかに ミニマルな領域を
広大無辺immeasurableな場として
提示するかを本願とするように
思うのですが、
タルコフスキーは
むしろ水や炎、風といった
日常的なものを静かにみつめることで
内的な広大無辺さinfinityを追求していきます。


ただこういう観方は、
あまりにタルコフスキーの
手の内に踊らされているようで
おもしろくなく、
やっぱりどういう風に
それとは違った読みができるかが
タルコフスキーをおもしろく観るための、
いや、眠らないための
観方なんだろうと思います。



まあ、なにはともあれ

あの無重力シーンは

映画史に残る白眉だよねえ。