共産主義が何故世界に広まったのか?それはその理論が優秀なことと、自由主義社会の環境が共産主義理論を受け入れやすい体質になっているからです。つまり自由主義社会の中にある唯物論的性質です。

唯物論的性質とは、その価値観が共産主義の価値観を受け入れてしまうような、あいまいな価値観であるという意味です。例えば人道主義です。人間は動物とは違う、人格を尊重しなければいけないなどは人道主義的な価値観です。しかし、これはあいまいな価値観です。なぜかと言うと「人間とは何か」という問題が解決されていないからです。

「人間とは何か」を質問した時、自信を持って答えられる人は少ないでしょう。何故ならば自由主義社会の人々が一般的に認めているのは進化論であるからです。

進化論によれば人間は動物から進化したのであるから人間も動物にすぎないのです。ここからは、人間は動物とは本質的に違うという主張は出てこないのです。これは共産主義者の考え方と同じであり、共産主義者に付け込まれる弱点です。

共産主義者は言います。「資本主義社会では支配階級と被支配階級が熾烈な闘いをしている。支配階級の人間性と人格を保護すべきか、あるいはプロレタリアートの人間性と人格をすべきか」

あいまいな人道主義を持っていた人は、この質問を受けると迷ってしまいます。共産主義者はまた言います。「支配階級は一握りであって、彼等のために被支配階級である多数の大衆は苦しんでいる。人道主義者であるあなたは、誰のためにその人道主義的価値観を遂行すべきか」

漠然と人道主義は誰とも仲良くし、誰にも害を与えないなどと単純な考えを持っていた人が、共産主義者にそんな単純な人生観とか価値観では現実性がないと言われると動揺します。

共産主義者のいう事には一理あります。対立的な関係があった場合には、より多い大衆のほうに味方するのが人道主義ではないかということになり、結局共産主義者の運動に巻き込まれます。あるいは、彼らに反対する気持ちがなくなってしまいます。