隣から人を叱っている声が聞こえる

新しく来た清掃の責任者の声だ

ひとつの部屋を簡単に仕切っただけなので良く聞こえる

 

あんなこと言っていいのかな、と私は思った

清掃の人たちは、海千山千の古強者の婦人たち

その扱いが難しいのは、長年の経験で良く知っている

 

思ったとおり、1週間でその責任者はいなくなった

人事課の3日先行く女子更衣室という言葉があるように

人を動かすのは難しい

 

私の職場でも同じようなことがあった

東電内の学園で講師をしていたという工業大学出身の

頭のいい人が、電気主任技術者としてやってきた

簡単な算数の問題を、複雑な方程式で解くような人だったが

同じようなことをやってすぐにいなくなってしまった

それから数年たったある日

駅でこちらをじっと見ている人がいたが、たぶんその人だったと思う

私は何もしなかったけれど

しかし何もしなかったことが、その人には恨みになったのかもしれない

人間関係は難しい

 

これらのことを体験すると、家庭連合の現場の責任者は楽だと思うようになった

何も考えさせず、奴隷のように働かせればいいのだから

ここでひらめいた

何も考えさせないという言葉は、そのまま責任者にもあてはまるのではないか

考えさせない、ということは「人を動かすために考える」ことを止めたに等しい

つまり責任者が何も考えなくなった

その結果が現在のこの状況ではないか

 

組織優先で、個人を軽視する

失敗した時の責任の所在の曖昧さ

流れに身を任せた結果生まれる、やましき沈黙

 

これは日本型の組織の欠陥として言われているが

今の家庭連合にもそのままあてはまるのではないか