多くの新キリスト教集団のなかで、とくに統一教会の出現に意味を持つものが五つあげられる。その五つの集団について論じていこう。統一教会では、その五つの集団が復帰劇でそれぞれの位置を占めていると説く。西海岸の二集団と東海岸の二集団は、それぞれルシファーとイブを象徴し、またそれぞれが「蘇生」と「長成」の二段階、そして統一教会が「完成」段階を表している。これらの団体はさまざまに関係があったといわれるが、これは天使長の位置にあった東海岸側がイブ(西海岸側)に近づいたことに置き換えて説明される。イブの位置を占める集団は、その後新しい復帰の時代を築くために韓国に現れる第三のアダム、つまり再臨主を見つけ出さなければならない。

聖主教
聖主教は西海岸にあった宗教集団である。北朝鮮の鉄山でおこり、キム・ソンド夫人が率いた。キム・ソンドは1920年代の初めにキリスト教に改宗したが、牧師に不倫関係を強いられ思い悩む。なぜ牧師が罪を犯したのか、さらには一般に罪の原因とは何かを理解したいと思い、熱心に祈った。彼女は毎晩、夜中の1時から昼近くまで祈ったといわれる。イエスその人が現れ、罪の根源は不義であり、エデンの園で果実を食べたことではない、そして十字架で流された血でこれを正すことができる、と教えたという。その堕落と磔刑は神がもっとも悲しんだ出来事だった。しかし今や地上にエデンの園の復帰が待たれている。朝鮮半島は日本から解放され(キム婦人には解放の正確な日時が啓示されていた),韓国の新たな救世主は人間の姿で現れて、イエスの未完に終わった務めを成就し、世界復帰を果たす。来たるべき主は新しい血統を確立し、主を受け入れる者は身心を清めなければならない。このため婚姻関係にあっても性行為は慎まなければならないとした(キム婦人の長男は妻と性交したせいで死亡したらしい、とムン師は述べている)。
人間同士の結婚は真の結婚ではないのだから、男と女は結婚すべきではない。ひとたびエデンの園が復帰されれば、人類はサタンの支配から免れ、男も女も裸体を恥じなくなる。聖主教では肉食が性衝動を強めると信じられていたため、信者たちはもっぱら菜食で通した。

聖主教が創始されたのは1935年。少なくとも一度は裸でも恥ずかしくないという考えが教会での礼拝式で採用されたらしい。統一教会の初代会長、ユー・ヒョーウォン夫人はつぎのように証言している。
大学(梨花女子大学)当局や既成教会が、私たちのことを裸で踊っていると思ったのは「原理講論」の要点が聖主教の教えと似通っていると考えていたからです。聖主教が南(韓国)に来てソウルで布教していると思ったのです。

キム・ソンド夫人の孫によると、夫人は遺書にこう述べていたという。
将来、性的告発を受けて迫害されるような集団や教会があれば、そこが再臨の地かもしれないので、調べにいきなさい。

ユー夫人の証言に出てくる事件の結果、ムン師が1955年に逮捕されると、聖主教の信者たちは、キム・ソンド夫人の遺書はムン師の教会のことを指しているのだと結論し、全員聖主教を捨てて、ムン・ソンミョンの世界基督教統一神霊協会と合流した。