先日、DVDを出された佐藤哲治先生が新たに著書『沖縄空手の超接近技法: 剛柔流で解く! 首里手・泊手のナイハンチ』を出版される。実はわたしも写真提供という形で協力した縁で、この度著書が送られてきた。大変すばらしい内容なので、この記事で本書を紹介したいと思う。

 

 

 

 
 

 

本書のタイトルにある「超接近技法」とは、空手本来の間合いに基づく技法を指している。よく首里手は遠い間合いから攻撃し、那覇手は近い間合いから攻撃する、と言われたりする。しかし、こうした主張は近代、とりわけ戦後出てきたものである。佐藤先生は、本来の首里手、那覇手、そして泊手にはそうした区別はなかったのではないかと疑問を投げかける。

 

近い間合いとは「相手を掴める距離」、遠い間合いとは「相手を掴めない距離」と定義することができる。しかし、遠い間合いから攻撃すると言っても、飛び込んで相手に接近しなければ突きは当たらない。つまり、現代では首里手であろうと那覇手であろうと、最終的には突き、とりわけ、正拳突きが当たる距離を基本の間合いとして想定している。

 

佐藤先生のいう「超接近」とは、この間合いよりも更に相手側に踏み込む間合いを指す。この「超接近」というパースペクティブから首里手、泊手、那覇手を俯瞰し、具体的にナイハンチ、サイファー、セーユンチン、ローハイ、クルルンファなどの型に含まれる技法を考察していく。佐藤先生は久場良男先生から剛柔流拳法を、そして久場先生の筆頭師範の新城孝弘先生から首里手、泊手も併せて学ばれている。

 

わたしがとりわけ興味深いと思ったのは、剛柔流の夫婦手である。佐藤先生が学ぶ剛柔流拳法には、片手を開手にして相手側に向けるような夫婦手が上級者向けの技法として伝わっているという。この場合、開手の位置は引き手のように脇下や腰ではなく、自分の鳩尾あたりに構える。そう言われてみると、前回の記事で紹介したように、宮城長順先生はたしかにそのような構え方をされていた。

 

 

上の写真の他にも、宮城先生が「超接近」して、相手に肘打ちや取手の技を仕掛けている写真が紹介されていた。このように、佐藤先生の著書の内容が想像ではなく、口伝を通して受け継がれてきたものであることが、これらの写真から確認することができる。

 

宮城先生の組手写真がFacebookにアップロードされたのはごく最近であるが、佐藤先生の著書を読むことで、より一層深く理解することができると思う。そして、両者の比較から、近代になって見落とされてきた空手本来の間合いへの考察が深まることであろう。