S戦車に発信機ぐらいつけられているのは昔から解っていた。
じゃなきゃ、なんで、行く先々にあんたがいるんだよ。
ミラーに黒のマジェスタがいると、ぞっとする。
数か月に1度、発信機の電池を交換しにくるだろ。
GPSをクルマの腹につけるのは、手が届く範囲なんだから。
トランクのほうからだと凹凸があるので見つかりにくい。
もちろん、走っているうちに落ちる可能性もなきにしもあらずだが、走り屋のクルマでもなく、S戦車なら車内で茶を沸かせるほど安定した走りだ。
ヤナセに捨ててもらったと刑事さんに伝えたが、『どこのヤナセや!』と大層お怒りだった。
なんで悪いコトをしたヤツがエバってるんだよ。
もう、黙秘権しかない。
でも、捨てた高速のパーキングまでは行ったのだろう。
で、あたしはおらず。GPSは見つからず。
あれは、だいたいのエリアまでしか判明しない。
パーキングのどこかまでは細かく解らん。
で、高速警備隊のパトカーの真ん前のゴミ箱とは気づかなかっただろうし。
だいいち、あそこでゴミ漁りをしていたら目立つだろ。
舎弟の運転する組織の車にも、盗聴器はあると思っていた。
話は幹部に筒抜けなのだ。
だから、余計な話はしなかったし、誘われても出かけることもない。
遠回りをしたってバレるわけで。
勝手にラブホでも入ろうものなら、あとからホテルのドアを全部ぶちやぶり見つけるだろうし。
もちろんそんな気さえない。
舎弟のほうが指を詰めないといけなくなる。
それは、、1度経験して、もう懲りた。
S戦車ではデカすぎて目立つな。
そろそろ国産のセダンでいいか。
特許庁を抜けた先のアメリカ大使館前の検問がいやで、裏の細道を通ったが、やっぱりおまわりさんらは待っていた。
あの、鏡に棒がついたやつで、クルマのお腹を見て回られるのも・・・。
あぁ。そうか。
あの、女のスカートを覗くみたいな棒つきミラーを手に入れればいいのか。
で、戦車のお腹をチェックしてから乗る。
売っていなかったら、、ガムテープでくっつけて作れる?