世の中には「これさえ買っておけば間違いない」という絶対的な定説がある。 高級炊飯器界隈におけるそれは、間違いなく象印の「炎舞炊き」だろう。 レビューサイトでも常に上位。みんな絶賛している。 だから僕も買った。毎日食べるご飯が美味しくなるなら、安い投資だと思ったのだ。

しかし、現実は違った。

べちゃべちゃのご飯と、夏の弁当地獄

水分が多いのである。 炊きあがりがどうにも「べちゃっ」とする。毎回水加減を減らして、ようやく「まあ、食べられるか」というレベルに着地させていた。 もしかして僕の味覚がマイノリティなのだろうか?とすら悩んだ。

さらに絶望的なのが「お弁当」である。 8月といえば、小学生の子供たちの長い長い夏休み。つまり毎日のお弁当作りというミッションが続く。 象印の高圧力で炊いた「もっちりねっとり」のご飯は、冷めると弁当箱の中で巨大なモチのような塊と化す。おにぎりも口の中で全くほどけない。 僕が求めているのは、昔ながらの「粒が立ったおにぎり」のはずなのに。

[ ここに以前の炊飯器、もしくはお弁当の写真 ]

「一番売れる味」の残酷な真実

なぜ一番人気のはずの炊飯器で、こんな悲劇が起きるのか。調べてみると、どうやら炊飯器の「物理法則」に原因があった。

今の日本の炊飯器市場は、濃い味付けのおかずを好む層や、飲み込む力が落ちた高齢者層に向けた「甘くて柔らかい、もっちりご飯」が最大公約数の正解となっているらしい。 メーカーは、高圧力で米を潰してでも甘みを引き出すことに全振りしている。うちで使っているお米は、ただでさえ水分と粘りの強い「コシヒカリ」だ。そこに高圧力をかけたら、そりゃあベチャベチャになる。

ブランドへの信仰を捨て、純粋な「物理構造」で炊飯器を選び直すことにした。

圧力を捨てるか、スチームで制すか

論理的に考えた結果、候補に挙がったのは2つ。

  1. 三菱電機「本炭釜」: 圧力を一切かけないストロングスタイル。米粒が絶対に潰れないため、お弁当最強。
  1. 日立「ふっくら御膳」: 圧力はかけるが、蒸らし時に107℃の高温スチームを噴射。表面をコーティングして結露を防ぐ「外硬内軟(外はしっかり、中はふっくら)」スタイル。



悩んだ末、僕が選んだのは日立の「ふっくら御膳」だ。 さらに言うなら、最上位機種ではなく、あえて機能を絞った**「RZ-V100HM」**というモデルを選んだ。



実は日立の炊飯器、最上位モデルとこのモデルで、ご飯を炊く心臓部(鉄釜・圧力・スチーム)の構造が全く同じなのだ。 最上位モデルには「スマホ連携」がついているが、米と水を釜にセットするのは結局人間の手である。外出先からスマホで炊飯器にアクセスできたところで、米が勝手に釜に入るわけではない。

味に関係ない機能を削ぎ落としたモデルが、ネット通販で驚くほど安く買える。これを狙わない手はない。

実食、そして結論

先日、無事に日立の炊飯器が届いた。 さっそくコシヒカリを炊いてみる。


うん、概ね美味しい。 劇的な感動で涙が溢れる……とまでは言わないが、確実に粒は立っている。 少なくとも、以前のように水分過多で悩むことはなくなった。お弁当箱の中でもしっかりとお米の形を保っている。 「粒が立っていて美味しいので、良しとする」。これが正直な感想であり、確かな勝利宣言だ。

「みんなが買っている一番人気の炊飯器」が、自分のライフスタイル(コシヒカリ×弁当)に合うとは限らない。家電選びは、ランキングやマーケティングの刷り込みではなく、「物理法則」で選ぶべきだ。

毎日のお弁当作りに苦戦している同志の皆さん。もしご飯の「ベチャつき」に悩んでいるなら、炊飯器の物理的なアプローチを疑ってみることを強くおすすめする。