2023年11月

ブラジル(サンジョセ・ドス・カンポス)

の地で行われた

第5回デフフットサルW杯で、

女子日本代表が

史上初の優勝で金メダルを獲得、

男子日本代表が

位で銅メダルを獲得しました。

 

デフサッカー,フットサルの歴史の中で

初の快挙です。

 

デフフットサル女子代表が

どんな軌跡を辿り

史上初優勝を成し遂げたのか。

 

ここまで7年間

スポーツメンタルコーチ

兼 手話通訳として

チームに帯同してきた私が、

その軌跡を読者の皆さんに

お伝えしていきたいと思います。

 

前回の記事はこちら

 

 

 


再び積極性が戻った アルゼンチン戦 


女子代表のアルゼンチン戦を前に

男子代表も同じくアルゼンチンとの予選を戦い

結果は日本が勝利し、堂々3連勝で

予選を一位通過していました!

 

女子代表は、前回ドイツ戦から

中1日のアルゼンチン戦

 

改めて全員で戦う気持ちと

ドイツ戦で発揮したかった

アグレッシブさを出していく。

 

積極的な守備でボールをとりに行く中で

勝ち切って行こうと臨んだ試合でした。

 

ベテラン中島選手のハットトリックなど、

本来の日本のフットサルを取り戻し、

4−0の完勝で、勝ち点7

 

いよいよ次戦アイルランド戦で勝利すれば、

初の決勝進出とメダル獲得が決定する。

 


アイルランド戦 まさかの・・・


連戦となるアイルランド戦

疲労も溜まり、コンディション的には

万全とは言えない中でしたが、

 

日本のデフフットサル界の歴史が変わる

この試合に選手たちのモチベーションは

高く維持されていると思っていました。

 

前半に宮田選手の先制点が生まれ、

このまま勢いに乗っていくと

誰もが確信していましたが、

 

そこに私たち日本に

スキがあったのかもしれません。

 

試合内容があまりにもチグハグだと

感じた監督は、

 

珍しくハーフタイムのミーティングで

選手たちに強い檄をとばしています。

 

後半に入っても

シュートが決まらない時間帯が長く続き、

パワープレイ返しのシュートも

なかなか枠をとらえられない。

試合後半の終盤に差し掛かってきました。

 

このまま1−0で逃げ切れば勝利が決まる

という展開のなか、

残り34秒でまさかの失点・・・

最下位アイルランド相手に

1−1のドローで試合が終わりました。

 

勝ち点を8に伸ばし

現段階では2位をキープしていましたが

次戦の世界王者ブラジル戦は、

引き分け以上で決勝進出。

負けるとイングランドに

逆転を許す可能性があり、

絶対に負けられない戦い…

とても厳しい状況に

変わってしまいました。

 

 

選手たちの中で、何が起こっていたのか

試合後に知ることとなります。

 


崩れかけた信頼関係


その理由は、

チーム内での信頼関係のほころびでした。

 

こういったケース,実は

どのチームにも起こり得ることです。

 

チームも自分のプレイも

思い通りいかない時、

改善したいと誰もが思いますが

自分の中に解決策が見つからないと、

どうしても負けた理由を

自分以外のところで

探してしまうことがあります。

 

ましてや世界大会

結果が求められる試合での戦いなので、

選手たちの気持ちとしても、

かなり通常とは違うメンタリティーで

戦っていたことは間違いありません。

 

 

敗因を一方的に仲間に向けてしまったことで、

チーム内の信頼関係が

大きく揺らぐことになったのです。

 

次は王者ブラジル

絶対勝たなければいけない試合を前に、

チームに与えられた大きな試練でした。

 

このままでは、絶対にブラジルには勝てない

どうしたら勝てるのか。

 

もう一度チームが結束するには

リスクを負っても、

みんなで本音で話し合おう

となったのです。 

 

 


本音で向き合う時間


この引き分けから

どう気持ちを切り替え、

ブラジル戦に向かって行くのか

 

チームの信頼関係の立て直しが

急務となりました。

 

私の役割として

まずは、直接の当事者となった

選手たちの話を聴いてあげること。

 

選手間の溝を埋めるための

アプローチをしていくわけですが

関わっていく土台として

これだけは信じて選手と関わった

ということがあります。

 

それは、

この8年、そしてその後の4年間

共に戦ってきたこの仲間の信頼は

こんなことで崩れるものではない。

 

ただ、歯車がずれただけで

絶対にもう一度

互いを信じ合えるチームに戻れる

と信じていました。

 

 

選手たちが

本気で世界一をとりにいきたいのか。

最後はどういう選択をとり、行動に移すのか。

 

神様が、私たちに与えた

最後の試練のような気もしたのです。

 

最後は、選手たちを信じるしか

私にできることはありません。

 

選手たちが、自分たちの力で

どうこの状況を打開していくのか

 

これこそが、最後の決戦を前に

選手たちにもその覚悟を

問われているような気がしました。

 

 

まずは、

選手間で本音を伝え合って、

最後はみんなで

本当はどうしていきたいのか

たくさん時間を使って

話を重ねてもらいました。

 

 

次の日の昼

選手と買い出しに出掛けていると

ある選手から

「いい話し合いができたよ」

と聞いて

 

私は、涙が出るくらい

嬉しかったです。

 

そして、夜のチームミーティングでは

4年間、王者ブラジルを倒すことだけを考えて

みんなが過ごしてきた。

もう一度チームが一つになって

ブラジルとの一戦に臨みたい。

 

監督の意志で

スタッフも交えて

思いを共有しあう時間

を過ごしました。

 

私たちが

やってきたこと信じて

そして、仲間を信じて

試練も苦しみも乗り越えて

応援してくれた人のために

 

やるべきことに意識を向けて

後悔のない選択,決断,プレイを

みんなにはして欲しい。

 

そんな願いを込めながら

いよいよ予選最終戦

ブラジルとの戦いとなりました。