ある日、彼女と夜のドライブをすることになり適当に車を走らせていた。
実はひそかに旅行の下見を兼ねてたんだけどね。
会話に夢中になりどこを走っているのかわからなくなり気づけば結構な山道に。
仕方なく街灯もないその道を進んでいく、すると・・・
白いワンピースを来た女の人が道端に立っている・・・
こともなく
後部座席に女の人が座っているのがルームミラーに映る・・・
こともなく
窓ガラスに突然たくさんの手の形がつく・・・
こともなく
フロントガラスに“ドーン”と老婆が現れる・・・
こともなく
軍服の旧日本兵が現れる・・・
こともなく
落ち武者が立っている・・・
こともなく
しばらく進んでいくとぼんやりと薄明かりのなかにほのかに見える汚れて消えかかった看板・・・
でもなく
煌々としたLEDを使った明かりの中にはっきりと見える小奇麗にしてある看板が見えた
道を聞こうと車を止め寄ってみた
「ごめんくださ~い 夜分にすみませ~ん 」
すると奥から腰の曲がった老婆が現れ
「この辺は町まで遠いし、良ければお泊りになられてはいかがです?」
ということこともなく
若々しい女将さんが
「今日はお一方もお客様おられないし、良ければお泊りになられてはいかがです?お安くさせていただき
ますよ 」
とのこと
夜も遅かったのでお言葉に甘え泊まることに
案内された部屋に入った瞬間 ゾクゾクっと寒気。もしかしてと思い、飾ってある額縁の裏側を見たら
御札が・・
ということもなく
快適な温度設定の広めの部屋
疲れたのでそのまま寝ることに
何の気なしに目が覚めると、目の前に女の顔が浮いている・・・
こともなく
かすかにすすり泣くような声が聞こえる・・・
こともなく
どこからかお経が聞こえる・・・
こともなく
天井に血のシミがじわっと広がる・・・
こともなく
壁からたくさんの手があらわれる・・・
こともなく
体が急に金縛りになり動けなくなる・・・
こともなく
時計を見たら2時、丑三つ時・・・
でもなく
4時半。
朝になり、道順を聞き、お礼を言いつつ旅館を後に。
「いやぁ、なんだかプチ旅になったなぁ笑 」
「そうだね。また来れるかなぁ 」
「来れんじゃない?そんな気がするよ 」
ある旅館の女将の話
「・・・そうです。毎年決まった日に、ふたりで来て・・・。
ここに来る途中の事故だったって聞いたから・・・
だから泊めてあげようってことで毎年・・・。」