刑務所では自分の物の証明や何かに署名をする際、受刑者は印鑑を持っていないので、指印を押す。
運転中に違反をした人などは分かり易いと思うが、人差し指の第一関節より上を印鑑代わりに押すあれだ。
あの指印が刑務所生活では頻繁に押すことになる。
私が出所する直前に指印はなくなったが。
願箋で願い出を書いた時。
何かを受け取った時。
等々必要だが、実はこんな指印なんて必要がないことがある受刑者達によって証明された。
どういう事かというと。
市原刑務所では欲しい本があると、毎月決められた日に決められた範囲内の冊数を願箋で注文できる。
図書購入願箋というものだ。
願箋には氏名や称呼番号や日付、本のタイトル等々書くのだが。
その名前の横に指印を押す。
その図書購入日に、ある受刑者Aは、願箋に受刑者Bの名前を書き、アイドルの写真集のタイトルを書き、指印の所は受刑者Aの指をグチャっと捻りながら押印して提出した。
2人は同じ工場で仲が良く、前々から脅しで「勝手に写真集買っとくね」なんて話していたらしい。
そして1ヶ月後に受刑者Bの元に写真集が届く。
もちろん受刑者Bは買った覚えなんてない。
受刑者Bは「あいつやったな」とすぐに察し、そのまま受け取りの指印を押して受け取った。
もちろん提出した願箋の指印と受け取った時に押す指印は違う。
それでも買えてしまう。
何も確認していないし、指印なんて必要ない。
ちなみに受刑者Bがその場で「俺こんなの買ってないです」と言うと同じ工場みんなが調査になるし、もちろん受刑者Bも調査対象になるので黙っていた。
ちなみに3000円もする写真集で、すぐに捨てたらしい。
必要ないものを、そしてそれをきっちりやっているように見せるのが刑務所なのか。