「一番壊れやすいのは心だよね」


学校に行けなくなった息子が妻に語った言葉です。


思えば、私自身、ずっとそうだった。


小3で突然転校し、嫌がらせを受けると同時に軍人のような教師に「お前が馴染もうとしないからだ」となじられた時…。


唐突に自分という存在に何も見いだせなくなり、首を電気コードで絞めて死のうとした中3の春…。


根拠のないプライドの高さと目の前で起きる現実に対応できないジレンマに陥り、自らの胸に包丁を突き立てた25歳の冬…。


他人が聞いたら些細なことかも知れないけど、少なくとも自分には生死にかかわる何かが心の中で弾けた瞬間だった。


それから時間が経過し、私は結婚して妻とともに生きることを決め、そして息子が生まれた。


有象無象が日々目の前を過ぎる毎日を過ごす中、私自身はいつの間にか、イヤらしい処世術も身につけ、自分に合わない何かを適当に流すようになっていた。


しかし、そんな私の前で不器用なほどに生真面目な妻、親から見ても優し過ぎる息子が有象無象が蠢く外世界と接する度に傷ついていく…。


形や経験は違えど、かつて傷つき命を絶とうとした自分は彼女、彼の心が傷んでいく姿が痛いほど分かると言い切る。


「一番壊れやすいのは心だよね」と言った息子の言葉は、核心…。


汚濁に満ちた人の欲やプライドは、安易に異なる他者を排撃して保たれようとし過ぎる中で、真っ直ぐ正しいことは何だろう?と問い続けて生きる者には生きにくい世の中だ。


しかし、汚濁を知り、その中で生きている私は、純粋なままの家族を守るためなら、いつでも汚い、卑怯なことをする覚悟だ。


心が危うい妻や息子をこれ以上、痛めつける何かがあったら、私は私なりに答のないジレンマという制裁を敵に加える。


壊れやすい心があるならば、それを私は私なりに守ってみせる。


幾度も死のうとした私だからこそ、できることがある。


壊れやすいのは心…。