競馬場に通いだした年、ひときわ目をひく4歳牝馬がいた。


盛岡競馬場から中央競馬にやってきたユキノビジンという馬だ。


父サクラユタカオー譲りの明るい栗毛に身を包んだ彼女は、中央牝馬クラッシックを目指し、オープン特別クロッカス賞を快勝し、桜花賞でも人気の一角をなした。


一際目立つ馬体は、その名に恥じぬ美しさ。


私はクラッシック戦線をこの馬にかけることにした。

でも、天才・武豊が駈る天才少女ベガが、ユキノビジンの前に立ちはだかった。

ユキノビジンは、桜花賞でベガに敗れ、2着に甘んじた。


続くオークスは、東京競馬場。


私は、競馬仲間とともに東京競馬場に駆けつけた。パドックで初めて直接目にしたユキノビジンは、本当にきれいな馬だった。


スタイルは抜群だけど、そばかすだらけのベガ(ベガファンの方、ごめんなさい)よりもずっと美人だった。


迷わず馬券に名前の入るユキノビジンの単勝を買い、広い東京競馬場の一階スタンドに行った。


ユキノビジンは絶好の位置取りで最後の直線に…。


「よっしゃ~~!!行け~!ベガに負けんな~!行けっ!!行け~っ!!」


ただひたすら、叫んだのを覚えている。


しかし、ベガは強かった。

ユキノビジンは再び、ベガに敗れた。


クラッシック春は連続2着。牝馬クラッシック制覇はかなわなかった。


そして迎えた秋。

秋の女王決定戦牝馬G1のエリザベス女王杯に向け、ユキノビジンは前哨戦G3クイーンステークスを快勝。


エリザベス女王杯で再び2冠馬ベガとあいまみえることになった。


いい加減、素直にベガの強さを認めればよいものを、私は維持になってユキノビジンを応援した。


ユキノビジンのほか、これまでG1戦線に出ていなかったけど、何か非凡なものを感じていた上がり馬ノースフライトに、「打倒・ベガ」を託した。


エリザベス女王杯最後の直線、ベガが来ない!


ベガも来ないが、ユキノビジンも来ない!


慌てる私の目に入ったのは、非凡なものを感じたノースフライトが、先頭を行く馬を追う姿だった。


ベガは3着に敗れた。


でも、ユキノビジンはもっと敗れた。10着と大敗を喫したのだった。


勝ったのは「ベガはベガでもホクトベガ!!」とアナウンサーが語り、後に最強ダート馬として名を残すホクトベガであった。


ユキノビジンによる打倒ベガの夢はかなわなかった。

雪国育ちの娘が、都会育ちの御嬢様に挑むという人間が勝手に作り上げたサクセスストーリーだったが、ユキノビジンはよく頑張った。


でも、ユキノビジンがベガとあいまみえることはもうなかった…。


一方で、打倒ベガで白羽の矢を立てたノースフライト、エリザベス女王杯でベガを下したホクトベガがこの後、ベガをも凌駕する活躍を見せてくれることになる…。(続く)