仕事の関係で小学校二年生まで育った街に行きました。
再開発が激しい昨今ですが、この街は30数年前の面影を残してます。私が育ったアパートもまだ健在で、当時夕暮れの中、迫る夕闇で見えなくなりつつあるゴムボールで友達と野球してた風景がまざまざとよみがえります。

懐かしい街を歩いていると、前から歩いてくる男性に目がひきつけられました。

「Tちゃんだ」。幼稚園から小学校二年生まで同級生だった友達です。30数年前にお別れして以来、互いに直接会ったことはありませんでした。顔も小学校二年生までの「Tちゃん」しか記憶に残ってませんし、成長し大人になった顔は知りませんでしたが、あれは間違いなく「Tちゃん」でした。


物覚えのいい子で、年長さんの時、富士山やエベレストの高さ、果ては重体と重症の違いまで知ってる男の子でした。運動はまるでダメでしたが、教育熱心なお母さんが自慢するのも当然な位、知識となったら右に出るものがいない凄い子でした。


私がその街から引っ越して10年ほど経ってからでしたでしょうか…。その街に住み続けてるほかの友達家族から「Tちゃん、精神障害になっちゃったみたいなの」と聞いたのは…。みんなが高校通ってる頃、私服で無表情でたまに街をふらふらしてると聞きました。


私が当時住んでた街とは離れていたので私自身は信じられない思いで聞き流したことを記憶してます。


そしてすれ違った「Tちゃん」…大人になって顔も当時とはだいぶ変わってましたが、間違いなく「Tちゃん」でした。

聞いていた通りでした。恐らくまだ彼は障害と戦っているのでしょう、表情はなく虚ろな目で歩いていました。

でも、すれ違う瞬間、彼は私を真っ直ぐ見て、「あ…!!」って。


…しかし、結局、私からも声をかけられず、彼も一瞬後、何事もなかったように歩き去って行きました。

私は振り返ってみましたが、彼の姿はもうありませんでした。


幼い頃、仲良くしてくれて、たくさんいろんなことを教えてくれた「Tちゃん」を感じたこと、鮮烈に記憶によみがえったことは、私にとっても忘れられない1日になりました。

彼がまだ闘病を続けてるのだとしても、同じ時代、空間に一緒に生きてるんだって分かっただけで嬉しいような不思議な思いに包まれました。

いつかまた、幼かった頃に仲良くしてくれた「Tちゃん」に出会う日が来たら、、今度は何かコミュニケーションできたらな…って思いました。