ついでに朝ごはんもつけるっつ!!




(ラジオ)
西北カリキア地方の天気予報をお送りします。 大陸より張り出した高気圧によって、天気は次第に回復に向かっています。 今夕は、西北西の風、風力は3、晴れ。素晴らしい満月の夜になるでしょう。 明日は晴れでしょう。 明後日は晴れでしょう。 次は生鮮食品市況をお送りします。カリキア中央市場調べ・・・・・・・・・



(キキ) 今夜に決めたわ 出発よ!
お母さーん!
お母さん 天気予報 聞いた?今夜 晴れるって! 満月だって!

(コキリ)キキ、あなたまたお父さんのラジオ持ち出したの?

(キキ)ねえ いいでしょう?ドーラさん こんにちは!私 決めたの 今夜にするわね!!

(コキリ)だって ゆうべは ひと月のばすって

(キキ)次の満月が晴れるか分からないもの!私 晴れの日に出発したいの!

(コキリ)あ… 待ちなさい キキ!!!ボンッ!!!

(ドーラ)出掛けるって、魔女の修業の事?

(コキリ)ええ 古いしきたりなんです魔女の子は13才で家を出るっていう

(ドーラ)早いもんだねえ。キキちゃんが、もうそんなになるんだねえ。

(コキリ)でも あの年で独り立ちなんて今の世に合いませんわ。

(ドーラ)あなたが この町に来た日のこと、よーく覚えてますよ。13才の小さな女の子が、ホーキに乗って空から降りて来たわ、目をキラキラさせて…ちょっと 生意気そうで

(コキリ) でも あの子ったら、空飛ぶことしか覚えなかったんですよ。…この薬も私の代でおしまいですわ

(ドーラ) 時代のせいですよ、何もかも変わってしまう。でも、わたしのリウマチにはあなたの薬が一番効くわ。フフフ…

(キキ)あら、あんなに急かしたくせに、いざとなったらグズつくのね。

(ジジ) 旅立ちは慎重におごそかに行うべきだと思うんだよ。

(キキ)そして ひと月のばして、 素敵なボーイフレンドでも現れたらどうするの?それこそ出発できやしないわ!
(ジジ)どうなることやら心配だね。決めたらすぐの人だから。

(キキ)あら そう?わたしは贈り物の蓋を開ける時みたくわくわくしてるわ。
(キキ)アッ!お父さーん!私 今夜 発つことにしたの

(オキノ) なんだって!?

(キキ)さっき 決めたの

(オキノ)だってほら、来週キャンプ道具を借りて来たのに…

(キキ)ごめんなさーい

(オキノ)こりゃ… イカン!ああっ!
ありがとう じゃ お待ちしてます
今夜 キキが発つことになりまして…

(コキリ)よさそうね

(キキ)せめてコスモス色ならいいのにね…

(コキリ)昔から魔女の服はこう決まってるのよ

(キキ)黒猫に黒服で まっ黒クロだわ

(コキリ)キキ そんなに形にこだわらないの、大切なのは心よ

(キキ)分かってるわ 心の方は任せといて!お見せできなくて残念だわ?

(コキリ)そして いつも笑顔を忘れずにね

(キキ)ハーイ

(コキリ)落ち着く先が決まったら手紙 書くのよ

(キキ)お父さん! あのラジオちょうだ~い!ねーラジオはいいんでしょう?
(キキ)ヤッタァ

(オキノ)はっはっはっは!とーうとう取られたなあ!どれ・・私の小さな魔女を見せておくれ

(キキ)うふふふふふふ

(オキノ)母さんの若いころに よく似てる…

(キキ)おとーさん!!ねえ 高い高いして!!小さい時みたいに。

(オキノ)よーし…ンッ!ハハハ… いつの間にこんなに大きくなっちゃったんだろう。上手くいかなかったら帰ってきていいんだよ。

(キキ)そんな事になりませんよーだ

ハハハ…

(オキノ)いい町が見つかるといいね

(キキ)ウン  



(男) 自分で住む町を見つけるなんて
(女) 大丈夫よ キキちゃんなら
(少女) どんな町にするの?
(少女) 大きな町?

(キキ)うん 海の見えるとこ探すつもり

(少女達) うらやましいなあ

(キキ)私 修行に行くのよ?よその町で一年 がんばらないと魔女になれないんだから

(少女)でも ディスコあるでしょ?

ハハハ…

(コキリ)キキ 時間よ




(キキ)ハーイ

(コキリ)あなた そのホーキで行くの?

(キキ)うん!新しく作ったの。かわいいでしょう?

(コキリ)ダメよ! そんな小さなホーキじゃ!お母さんのを持って行きなさい

(キキ)ヤダー そんな古いの

(コキリ)だからいいのよ!よく使い込んであるから、嵐にも驚かずに飛ぶわ。ね そうしなさい

(キキ)せっかく苦労して作ったのに ねえ ジジ

(ジジ)僕もおかあさんのホウキがいいと思うよ

(キキ)うらぎりもの!

(ドーラ)キキちゃん。新しい町に慣れたら、自分のホウキを作ればいいじゃない?

(キキ)…うん

(オキノ)気をつけて
(コキリ)しっかりね

(キキ)行ってきまーす

がんばってー
ゴーゴー! キーキ!ゴーゴー! キーキ!ゴーゴー! キーキ!




(ホーキをたたく音)
(鈴の音)
(遠くなる鈴の音)

(コキリ)相変わらず ヘタねえ

(オキノ)大丈夫だ 無事に行ったようだよ

(男) あの鈴の音も当分 聞けないなあ

(ジジ)どっちへ行くの?

(キキ)南よ 海の見える方!  



(キキ)ジジ ラジオつけて!!今 手がふさがってるの 早く!




魔女の宅急便




♪あのひとのママに会うために

♪今 ひとり列車に乗ったの

♪たそがれせまる街並や車の流れ

♪横目で追い越して

♪あのひとはもう気づくころよ

♪バスルームにルージュの伝言

♪浮気な恋をはやくあきらめないかぎり

♪家には帰らない

♪不安な気持を残したまま

♪街はDing - Dong遠ざかってゆくわ

♪明日の朝ママから電話で

♪しかってもらうわ My Daring!


(キキ)こんばんは!

(先輩魔女) あら… あなた新人?

(キキ)ハイ 今夜 出発したばかりです

(先輩魔女)そう、その音楽とめてくださらない?私 静かに飛ぶのが好きなの

(キキ)あ… 知らない町に住みつくって大変ですか?

(先輩魔女)そりゃね いろいろあったわ。でも 私 占のでまあまあやってるわね

(キキ)うらない…

(先輩魔女)近ごろは恋占いもやるのよ

(キキ)わぁ…

(先輩魔女)あなた 何か特技あって?

(キキ)いえ・・いろいろ考えてはいるんですけど…

(先輩魔女)そう、私は もうじき修行があけるの!胸をはって帰れるのでうれしいわ、あの町が私の町なの・・・大きくはないけど まあまあってとことね!あなたもがんばってね。

(キキ)ハイ!

(先輩魔女)じゃあねー

(ジジ)ヤな感じ あの猫 見た???ベー

(キキ)特技か…  

(キキ)ワァッ!!きゃあああ!!何よ!!!!!あの天気予報は!

(ジジ)ダメだよ 貨物列車だもん!

(キキ)雨がやむまで ひと休みしよう

(ジジ)しかられないかな?

(キキ)見つかればね…わぁ びしょぬれ

(ジジ)ここ 揺れない?

(キキ)ああ いい匂い

プー―――――――

(キキ)ワァッ!ワッ ワッ!ヤハハハ…

(キキ)ゴメン!あなた達のご飯って知らなかったの!!

(キキ)わぁ…ジジ 海よ 海!スゴーイ 初めて!!

(ジジ)なんだ、ただの水タマリじゃないか

(キキ)わぁ 見て見て!大きな町! 魔女いるかしら?

(ジジ)さーあねぇ

(キキ)行くよ!!!
ジジ くっついてる?!!

(ジジ)アァ…

(キキ)見て!海に浮かぶ町よ…時計塔よ!こんな町に住みたかったの。

(ジジ)でももう他の魔女がいるかもしれないよ

(キキ)いないかもしれないわ?スゴイねえ

(ジジ) ちょっと大きすぎるよ この町

(時計番)おお~ 魔女とは珍しいな

(キキ) おはようございます!あの、この町に魔女はいますか?

(時計番)いやあ 近ごろは とーんと見かけんな…

(キキ)聞いた? 私 この町にするっ!!おじいさん ありがとう

(時計番) いや…  

(ジジ) 本当に降りる気?

(キキ)もちろんよ

(ジジ)みんな 見てるよ

(キキ)笑顔よ! 第一印象を大事にしなきゃ




(キキ)あの 私 魔女のキキです!こっちは黒猫のジジ!お邪魔させていただきます!!この町に住まわせて頂きたいんです。きれいだし 時計塔もステキだし!

(おばさん) そう…?気に行って貰えて 良かったわ

(警官) きみきみ~道路に飛び出しちゃダメじゃないか!あやうく大事故になるところだ!町中を飛び回るなんて非常識きわまりない

(キキ)私は魔女です 魔女は飛ぶものです

(警官)魔女でも交通規則は守らねばいかん!住所と名前は?

(キキ)家に連絡するの?

(警官)君は未成年者だろう?必要となればそうする事もある

(トンボの声) ドロボー ドロボー ドロボー!

(警官)君はここにいたまえ

(ジジ)キキ…

(トンボ) ねえ、ねえ上手くいっただろ?泥棒って言ったの、僕なんだぜ。君、魔女だろう。飛んでる所を見たんだよ。本当にホウキで飛ぶんだねえ。ねえ、そのホウキちょっと見せてくれない?頼むよ、ちょっとだけ。ね?いいだろ?

(少年) トンボー!朝っぱらからナンパかよー?!

(トンボ) バ~カァ!ははは・・・おっと!頼むよ!ちょっとだけ!ねっ いいだろう?

(キキ)助けてくれて ありがとう!!でも 助けてって言った覚えはないわ!それにキチンと紹介もされていないのに女性に声をかけるなんて失礼よ!!ふん!

(トンボ)お、さすが魔女だな 僕の婆ちゃんみたいだ

(キキ)ついてこないで!

(トンボ)おおっああっカッコイイー!!

(フロント) お泊まり?どなたか保護者の方はいらっしゃらないのですか?

(キキ)私は魔女です魔女は13才で独り立ちをするんです

(フロント) では 身分証明書などを…

(キキ)結構です

(ジジ)食べないの?

(キキ)欲しければジジにあげる

(ジジ)もう夕方になっちゃうね…

(キキ)行きましょ

(ジジ) 別な町を探そうよ、大きくても、もっといい街があるよ、きっと。

(オソノ) 奥さーん 忘れ物!奥さーん! ああ 困ったねえこれがないと あの子大泣きするんだよ。お客さん、悪いけどちょっと待っててーこれ 届けてくるから

(キキ)あの… 私でよければ届けましょうか?

(オソノ)え…!? でも…

(キキ)あそこを曲がった乳母車の人でしょう?

(オソノ)じゃ 頼むわ??悪いね

(キキ)いいえ。ジジ 行くよ!!

(オソノ)ああっ!!へぇ… ワァーオ

(キキ)パン屋さんに頼まれました

(赤ん坊の泣き声)

アハハハ…

(オソノ)ありがとう!お待ちどうさ、いつものね!あっ ご苦労さん!入って待ってて、ありがとう~お待ちどうさま!ハイ どうも、気をつけてね!
驚いちゃったよ!あんた空飛べるんだね

(キキ)この手紙を預かってきました

(オソノ)あの人のサインじゃない…“おしゃぶり受け取りました、ありがとう”




(キキ)じゃ 私はこれで

(オソノ)ああ、待って。ね、ちょっと寄ってかない?お礼もしたいしさ
(フクオ) オ… オイ

(オソノ)こっちよ!座って。珈琲がいい?

(キキ)ハイ

(オソノ)キミはこれ

(オソノ)フーン なるほどねえ。自分の街を見つけるって訳か。

(キキ)この街の方は魔女がお好きじゃないみたいですね。

(オソノ)大きな街だからね、色んな人が居るさ。 でもわたしは、あんたが気に行ったよ。で 泊まる所は決まったの?・・・・なんだ そうなら早く言えばいいのに!家に空き部屋があるから使っていいよ

(キキ)ホントですか? 奥さん!

(オソノ)ハハハ… 奥さんじゃないよ。ここらじゃ パン屋のオソノで通ってるんだよ

(キキ)私、キキです!こっちは黒猫のジジ!

(オソノ)ちょっと汚いけど 好きにしていいから

(キキ)ハイ

(オソノ)水とトイレは下よ、何かあったら遠慮なく言いなさい

(キキ)ありがとう

(ジジ) 粉だらけだね

(キキ)うん

(ジジ) 僕 明日には白猫になってると思うよ

(キキ)ジジ 海が見えるよ

(ジジ) 明日 他の町を探す?おッ!チェッ チェッ 気取ってやんの!

(キキ)私 もうちょっと この町にいるわ、オソノさんのようにわたしの事気にってくれる人が、他にもいるかもしれないもの。

(キキ)…ウーン…ハッ!

(キキ)電話を引くのって いくらすると思う?
(ジジ) でんわ?
(キキ)そう お店 開くの

(キキ)おはようございます

(オソノ)おはよう よく寝むれた?

(キキ)ええ いい匂いね 手伝っていい?

(オソノ)うん
(オソノ)ハァー宅急便ねぇ…

(キキ)わたし、空を飛ぶしか能が無いでしょ? だからお届け屋さんはどうかなって。

(オソノ面白いよ。空飛ぶ宅急便って訳ね。考えたねえ。あの部屋使ってもいいからね。

(キキ)ホント!?うれしい!電話を引こうと思ってるの

(オソノ)お金がかかるんじゃない?

(キキ)少しなら持ってきたわ

(オソノ)もったいないよ~ねぇ この店の電話を使いなよ、お客がつくまでが大変なんだからさ?私 こんなお腹だからさ、あんたが店番やってくれれば部屋代と電話代ナシってので どう?ついでに朝ごはんもつける!

(キキ)ワァーッ ありがとう!私 うんと働くね!

(オソノ)キャッ!

(キキ)オソノさんって いい人ね!

(オソノ)ワハハハ…

(キキ)ジジ 終わったよ!お買い物に行こう

(ジジ) 飛び出しちゃダメだよ~田舎じゃないんだから

(キキ)分かってるわよ! ついよ つい

(キキ)もうちょっとステキな服ならよかったのにね  

(キキ)暮らすって 物入りねぇ…
(ジジ) キキ 見て! 見て!
(ジジ) お金 足りる?

(キキ)しばらくはホットケーキで頑張るしかないわね。・・・・素敵ね~

(少年達の笑い声)あははっはは

(トンボ) おおっと…止めて 止めて!マジョ子さーん!今日は飛ばないのぉ?なぁ 本当に黒い服 着てるだろ?ねえ、あっちょっと 待ってよ~マジョ子さーん

(少年達) ワッハハハ…

(オソノ) キキ、ちょうどよかったお客さんよ。
(キキ)え?
(オソノ) お届け物を頼みたいって人がいるの

(キキ)ホント! すぐ行きます!アッ…地図!

(オソノ)お店のお得意さんなのよ、あんたの話がでたら ちょうどいいからって

(マキ) かわいい魔女さんね

(キキ)キキといいます

(マキ)これを届けてほしいんだけど、夕方までに間に合うかしら?

(キキ)ハイ

(マキ)甥の誕生日のプレゼントなんだけど、急に仕事が入って行けなくなっちゃったのよ

(キキ)どちらへお届けしましょう?

(ジジ) 僕がいる…

(マキ)ちょっと遠くないかしら?

(キキ)まっすぐ飛べますから

(マキ)お礼はいかほど?

(キキ)え…あの… まだ決めてないんです

(マキ)これでどうかしら?

(キキ)こんなに? ありがとうございます!

(トンボ) アッ…わあっそれっすごいなあ

(オソノ)私も飛べたらねぇ…




(トンボ)おばさん あの子 知ってるの?!!

(ジジ)キキ どこまでのぼるつもり?

(キキ)仕事始めだもの、お巡りさんにジャマされたくないじゃない?
(ジジ)僕はまた天使にお届け物をするのかと思ったよ

(キキ)あの岬の向こうだわ…行くわよ!ジジ 私 この町 気に入ったわ

(ジジ) 安心するのはご用心

(キキ)これでお母さんに手紙を書けるもの


(キキ)雁の群れよ ステキ、私達と同じ方向に行くんだわ。アハハハ…どうしたのかしら?

(ジジ)“風が来る”って

(キキ)エッ!?

(ジジ)“高く高くのぼろう”って

(キキ)キャッ!大変!  あ…ああっ
いけない! ゴメン ゴメン!あなたの卵を狙ったんじゃないのよ、はぁ… 怖かった

(ジジ)キキがいけないんだよ!!せっかく雁が風だって教えてくれてたのにさ

(キキ)ほんとね、すごいね~あの風を使って あんなに高くへのぼってる

(ジジ)キキーッ!

(キキ)うん?

(ジジ)いなくなっちゃってる

(キキ)ホント 大変!

(ジジ)落ちた時かな?

(キキ)ウン!

(騒ぎ出すカラス達)

(キキ)ハッ!

(ジジ)“卵ドロボーが また来た”って言ってるよ

(キキ)そんなぁ… どうしよう、キャッ!ワァーッ、ホウキをやめて… やめなさい!コラーッ やめてーっ!困ったなぁ まだ騒いでるわ

(ジジ)あーあ 魔女も落ちぶれたものだよ、カラスは魔女の召し使いだったのにさ

(キキ)それは大昔のことでしょ

(ジジ)陽が沈んでから そっと近づいて探すしかないね

(キキ)約束の時間に遅れちゃうわ。ジジ こうなったら最後の手段よ!

(ジジ)見つかっちゃうよ!

(キキ)お願い 探したらすぐ助けに行くから

(ジジ)あの家?

(キキ)うん 動いちゃダメよ

(ジジ)息は?

(キキ)できるだけしないで

(呼び鈴を鳴らす音)

(ケット) おばちゃんのプレゼントだ、ヘンなの!アハハハ…

(母親) 遅かったのね、妹から電話があって待ってたのよ

(キキ)すみません、サインをお願いします

(ケット)お義母さん、カナリア 移してもいい?

(母親)いいわよ、逃がさないように気をつけてね

(ケット) ウン

(キキ)ありがとうございました

(口笛をふく)

(ケット) おとなしくしな ピッチィ、コラッ ダメだよ 逃げちゃ

(ジジ)キキ 早くぅ

(キキ)この辺のはずなんだけど…ハッ!あった!ごめんくださーい!どなたか いらっしゃいませんか?ごめんくださーい

(ウルスラ)ハーイ、今 手が離せないのー上がって来てくれる?

(キキ)ハッ!

(ウルスラ)なぁに?

(キキ)あの、窓のとこにあるヌイグルミの黒猫、私が落とした物なんです

(ウルスラ)いい子ねぇ 動かないでね、さっき 森で拾ったのよ

(キキ)あの… 返してくださいますか?

(ウルスラ)ちょっと待って 今いいとこなの、ステキよーあんた美人だねぇ  

(ウルスラ)なんだ そうならそうと早く言えばいいのに!ちょっと気に入ってたんだ

(キキ)すみません…アッ!やぶけちゃってる

(ウルスラ)カラス達の仕業ね、あの時騒いでいたから

(キキ)どうしよう お客様の物なのに…

(ウルスラ)ねぇ 交換条件っての どう?




(ウルスラ)13才で独り立ちねぇいいね 私 そういうの好きよ

(キキ)あの… 直ります?

(ウルスラ)任せとけって

(母親) ケットちゃん、早く おフロに入りなさい。お客様がじきみえるわよ・・・ケット!!!

(ジジ)ウッ…ヒッ!

(ウルスラ)できた!

(キキ)ありがとう

(ウルスラ)さあ 急いでジジ君を助けに行きな

(キキ)でも まだ片づけが…

(ウルスラ)もう充分だよ さあ 行った行った!

(キキ)ありがとう

(ケット) ほんとジェフって変わってるよ
(母親) おかしいのよ, ジェフったら猫のぬいぐるみがすっかり 気に入っちゃって放さないの.(父親) 子犬と思ってるんじゃないかな
(祖母) マキが聞いたら怒るわね

ハハハハ

(ケット)いいんだ, ジェフにあげるんだよ, ぼく
(母親) マキおばちゃんに手紙 書いたら?
(祖母) ジェフもすっかり年を取ったからね、優しくしてあげるんだよケット
(ケット) でも 寝てばかりいるよ
(祖母)そうだね
(母親) ケットジェフが出たがっているわ、開けてあげて

(ケット) ハーイ!すんだら自分で閉めるんだよ

(キキ)ジジ!

(ジジ)遅いよぉー

(キキ)ゴメンね

(ジジ)あのヒトが助けてくれたんだよ、ヌイグルミを届けてくれるって…

(キキ)お願いできますか?

(キキ)まだ 体 おかしい?

(ジジ)お腹へった…

(キキ)ほんとね… 私もクタクタ、でも ステキな一日だったわ、ヌイグルミを見つけてくれた人がね私をモデルに絵を描きたいって

(ジジ)ヌード?

(キキ)バカ  



(キキ)ヒマねぇ…

(ジジ)アッ!ダメだよ 店番中なのに

(キキ)だって お客さん来ないんだもの

(ジジ)もうすぐ 混む時間になるよ

(キキ)違うの. お届けもののお客さん. ジジ, このまま ずっとお客さんが来なくてお婆さんになるまで毎日毎日まい---にちホットケ-キばかりだったらどうしよう?

(ジジ)僕 ホットケーキ好きだよ、

(キキ)猫って気楽ね~いまにホットケーキみたいにまん丸くなっても知らないから。ステキね…ファッションデザイナーなんだって

(ジジ)あそこんちの猫 キライだよ、やたらきどってるんだもん

ジリリリリリジリリリリリ

(キキ)ハイ グーチョキパン店です!エッ… ハイ やってます。ジジ お客よ お客!
4時半にお宅へ伺うんですね、かしこまりました。ご住所をうけたまわります。ハイ… 青い屋根のお宅ですね、はあ, ありがとうございます。必ず お伺いします!

(トンボ)やあ!ください!これっ

(キキ)ありがとうございます

(トンボ)頼むから怒らないで聞いてよ. 今日, 僕らのクラブのパ-ティがあるんだ. 飛行クラブって言うんだけど, ぜひ 君に来てほしいんだよ. これ, 招待状. まじめな集まりなんだよ. へえ, みんな君の話を聞きたがっているんだ

(キキ)はっ いらっしゃい

(男) ここで配達をやっとると聞いたんだが

(キキ)あっ… ハイ お届け物ですか?

(男)こいつを大急ぎで運んでくれないかね

(キキ)お預かりします

(男)大丈夫かい!?

(トンボ)手伝おうか?

(キキ)いい…ウ…ン

(トンボ)6時に迎えに来るからそれまでに決めといてね. じゃあ!

(キキ)あっ!

(男)いくらだね?

(キキ)あ, あの市内ですか, 市外でしょうか?

(男)箱に書いといたんだが

(キキ)エッ!? あっ すみません

(キキ)オソノさーん!どうしよう!パーティーの招待状 もらっちゃった

(オソノ)ステキじゃない 行って来なさいよ

(キキ)でも私 この服しか持ってないもん

(オソノ)あら そんなこと気にしてるの?それ とってもいいよ、黒は女を美しく見せるんだから

(キキ)ホント?

(オソノ)仕事は?

(キキ)あっ 2つも入ってるんだ!もう4時だわ 大変!すみません 店番 お願いします。ジジー ジジー!

(オソノ)フフフ…




(ジジ)あんなにあの子のこと 怒ってたのにパーティに行くの??

(キキ) 声を掛けないで, 集中しないとこの荷物重いんだから. うっ, へっ, はあ, うっ,

(キキ)ありがとうございました。急がなくっちゃ、次は4時半って約束なのよ。青い屋根よ!

(ノッカーをたたく音)

(キキ)あの, お届け物のご依頼をお受けしたキキと申します

(バーサ) まあ!どうぞ!時間どおーりでしたねぇ

(キキ)ハイ

(バーサ)奥さま みえましたよ

(婦人) あらあら, 大変. 困ったわね, もう約束の時間になってしまったの?

(バーサ)どうぞ

(キキ)ハイ

(バーサ)それ 預かりましょう!黒猫にホーキ…ひい婆ちゃんの言ったとおりだわ




(キキ)魔女のキキと申します

(婦人)まあまあ, かわいい魔女さんだこと.それがね, 届けて貰うはずの料理がまだ焼けてないのよ。ちっともオ-ブンの温度が上がらないの. おかしいわね.
駄目ね, 機械も人も年を取ると. 孫のパ-ティに温かいお料理を届けて貰おうと思ったのよ. あたしの自慢の料理. にしんとカボチャの包み焼き. でも諦めましょう, 孫には電話で謝って置くわ. あなたには無駄足をさせてしまったわね. バ-サ, バ-サ, 魔女さんにお礼をお渡しして.


(バーサ)は…はい

(婦人) いいのよ, お約束のとおりにお渡しして

(キキ)奥さま!

(婦人)そうさせてちょうだい、あなたのせいではないんだから

(キキ)あ, 奥さま, 私まだちょっと時間があるんです. そのオ-ブンは使えないのですか?

(婦人)え? ああ, これね. 昔はよくこれで焼いたけど, でもずいぶん使ってないから…

(キキ)たきぎのオーブンなら私もお手伝いできます、田舎で母に仕込まれました

(婦人)そうはいっても大仕事よ

(バーサ)名案ですよ 私は電気はキライだけど薪なら暖炉用のがあるし

(キキ)やりましょう 奥さま

(婦人)そうねぇ…じゃあ お願いしようかしら

(ジジ)良い子ぶってパーティーに遅れても知らないよ

(キキ)だって お金だけもらえないよ、急がなくちゃ

(バーサ)ほら まだ使えますよ

(婦人)お母さまのお仕込みがいいのね、段取りがいいわ。なんかワクワクするわねぇ

(バーサ)私は電気はキライです

(婦人)ちょうど ころあいね、あ、そのくらいでいいわ。あとは待つだけね

(キキ)40分くらいでしょうか…

(婦人)ええ そうね ひと休みしましょう

(キキ)他に何かお手伝いする事はありませんか?

(婦人) あら、そう。じゃあ お願いしようかしら?

(バーサ)悪いわねぇ

(キキ)いいえ

(ジジ)もう間に合わないと思うよ、たぶん

(キキ)心配屋!フルスピードで 飛ばせば 15分で ギリギリセーフよ

(婦人)お茶が入りましたよ、こっちいらっしゃい
(婦人)6時からパーティー? 間に合うの!?

(キキ)大丈夫です 15分あれば足りますから

(婦人)大変! あの時計 10分遅れてるのよ

(キキ)ええっ! ど…どうしよう

(婦人)早く カマドへ

(キキ)ハ… ハイ

(婦人)バーサ バーサ

(キキ)どうでしょう?

(婦人)よく焼けてるわ さっ 早く

(キキ)ハイッ

(バーサ)え, はあはあ, あえ, 急いで!

(キキ)ハイ

(婦人)忘れ物よ

(キキ)あっいけません こんなに!

(婦人)受け取ってちょうだい

(バーサ)あぁ~早く 早く

(婦人)ステキなパーティーを!




(バーサ) そこから出て!  

(キキ)さっきまであんなにいいお天気だったのに

(ジジ)ヒゲがピリピリする!雨やどりしよう!

(キキ)ダメよ 間に合わなくなっちゃうもん!!このお料理も冷めちゃうわ!

ゴーンゴーンゴーン

ピンポーン

(少女) 何かご用?

(キキ)お届け物です

(少女)まあ ずぶぬれじゃない

(キキ)急に降って来たものですから。でも お料理は大丈夫です

(少女)だから いらないって言ったのよ

(母親) なあに?

(少女)お婆ちゃんから またにしんのパイが届いたの

(キキ)あの、受け取りにサインをお願いします

(少女)私 このパイ キライなのよね

(ジジ)今の本当にあの人の孫?ベッ! ベ--!!


(ジジ)パーティー もう間に合わない?キキ あの男の子だよ!今なら まだ間に合うよ!

(オソノ) 大変だったわねぇ、あの男の子 ずいぶん待ってたのよ

(キキ)もういいんです. このなりじゃ 行けないもの.…



(ジジ)どうしたの キキ 頭でも痛いの?何か食べようよ、ぼくお腹へっちゃった  

(オソノ)キキー!

(ジジ) ニャーッニャーッ

(オソノ)具合が悪いの?ひどい熱ね

(キキ)頭がガンガンするの

(オソノ)あんた昨日ちゃんと体を拭かなかったでしょう?

(キキ)…私 このまま死ぬのかしら

(オソノ)ん!? ハハハ…ただのカゼよ 薬を持って来てあげる。それに 何か食べなきゃダメね

(キキ)欲しくない

(オソノ)つらくても ちょっと食べた方がいいの、ミルクがゆを作って来てあげるわ。ジジにもね

(ジジ)ニャー

(オソノ)カゼの時は これが一番!フー! はい ジジ、熱いから気をつけな?

(ジジ)アチッ!

(オソノ)さあ 冷めないうちに食べな、起きられる?

(キキ)どうしても食べなきゃダメ?

(オソノ)治りたかったらね、そうださっき あの男の子がお店へ来たよ。病気だって言ったら“魔女も病気になるんですか?” だって。フフフ…お見舞いに来たいって! どうする?

(キキ)ダメーッ!

(オソノ)フフフ… たぶん そう言うと思って丁重にお断りしといたわ、よく休みなさい 疲れが出たのよ。窓を開けとくねー

(キキ)オソノさん

(オソノ)ン?

(キキ)ううん なんでもない

(ジジ)アッ!

(キキ)ジジー!ジジー!

(ジジ)なあ…に…!?ウッ!

(キキ)ジジー ごはんよー

(オソノ) キキ!今朝はどう?

(キキ)もう すっかりいいみたい、ごめんなさい 朝寝坊しちゃった

(オソノ)いいのよ. あとで ちょっと頼みたい事あるよ. 来て!

(キキ)はい

(キキ)コポリさんていうの?

(オソノ)そう お礼はこれでいい?

(キキ)いらないわ 近くだから歩いていけるし

(オソノ)ダメよ 仕事は仕事、必ず本人に渡してね

(キキ)ジジー!

(ジジ)しごと?

(キキ)あらお友達? 何ていう名前?

(ジジ)リリーっていうの 今 行く

(キキ)いいよ、ちょっとだから。リリーさん よろしくね

ニャーッ

(キキ)アッ!わぁ…ステキ…

(トンボ)ねえ マジョ子さーん!

(キキ)あ…!

(トンボ)散歩?

(キキ)ううん、コポリという人を探してるの

(トンボ)それ 僕のことだよ

(キキ)エエッ!?

(トンボ)そっちへ回って すぐ行くから

(キキ)ハッ! オソノさんだ!

(トンボ)ありがとう

(キキ)この前 ゴメンね。随分待たせちゃって

(トンボ)君こそ雨の中 大変だったね、ねえ, ちょっと寄ってかない? 見せたいものがあるんだ. ねえ, 早く




(トンボ)こいつの完成を祝うパ-ティだったんだよ. 人力飛行機の機関部なんだ. ほら.翼と胴体は別のところで組み立て中なんだ. この夏休み中に飛ばすんだぜ. 僕がパイロットで. ぶう--ん.

(キキ)フフフ…

(トンボ)ねえ 海岸に行かない?不時着した飛行船を見に行こうよ

(キキ)飛行船?

(トンボ)あれ? テレビ見なかった?

(キキ)寝てたから…

(トンボ)じゃ なおさらだ 行こう!

(キキ)これで行くの?

(トンボ)そうさ 訓練 訓練、足をきたえなくちゃ。さあ 乗って

(キキ)エ… ええ、私 自転車 初めてなの

(トンボ)ホント? そりゃ いいや。ちょっと足で支えててね 勢いがつくまで、行くよ。蹴ってー!

(キキ)降りる?

(トンボ)NO!

(男の人) ハハハ…

(子供) ハハハ… がんばれーおいついたな! ははは--……

(トンボ)急カーブにかかったら体を倒して!

(キキ)エ…!?

(トンボ)体を傾けないと曲がれないんだそれっ!そうれ!!!いいぞ その調子!スゴイ 最高!

(キキ)ハッ!飛行船て あれ?

(トンボ)ああ

(車のクラクション)

(トンボ)ワァーッ飛んだーっアーッアッ!ウーン…

(キキ)トンボ 大丈夫?

(トンボ)ああ・・・キキは?

(キキ)平気…

(トンボ)…フフフ

(キキ)アハハハ…アハハハ…

(トンボ)うん? そんなに僕の顔 変?

(キキ)はは, 違う, ははは, ごめん, だってとても怖かったもん!! うははは

(トンボ)ハハハ… 僕も怖かったよ。ねっ さっき魔法を使ったの?

(キキ)分かんない 夢中だったから。あーあ 自転車めちゃくちゃ

(トンボ)あっイケね 仲間に怒られる。キキ 自転車を頼む

(キキ)どうしたの!?

(トンボ)自転車 こぎすぎたんだ。ま、待てーっ  


(トンボ)いいなあ、あんなので世界一周できたらなあ。初めて空飛んだ時 どんなだった?

(キキ)覚えてないの とても小さかったから。でも 怖がらなかったって母さんが言ってたけど

(トンボ)僕も魔女の家に生まれればよかった、キキなんか ホーキでツィーだけどさ僕なんか コレだもんな。へえ, へえ, へえ

(キキ)フフフ…あたのしは仕事だもん 楽しいばかりじゃないわ

(トンボ)そうかな、才能をいかした仕事だろ ステキだよ

(キキ)私 ちょっと自信をなくしてたの、でも今日 ここへ来てよかった。海を見てると元気になれそう

(トンボ)よかったらいつでも連れて来てやるよ、訓練をかねてね

(キキ)トンボって いい人ね

(トンボ)あれ? 今ごろ気がついた?

(キキ)だって 初め不良みたいだった

(トンボ)オフクロがさ よく言うんだ“この不良息子!空ばかり見てないで勉強しろ!”って

(キキ)ハハハ…

(少女) トンボー

(トンボ)ん?

(少女)スッゴイ ニュースよぉ

(トンボ)なあに?

(少女)いいこと 早く!

(トンボ)ちょっと待っててね

(少女)飛行船の中 見せてくれるって!行く?

(トンボ)ワァ すごい 行く 行く!

(少女)ねぇ あの子 だあれ?

(トンボ)魔女のキキって言うんだ。キキー! 一緒に行かない?飛行船の中 見せてくれるって

(キキ)私 いい

(トンボ)ねぇ 行こうよ

(少女)あの子 宅急便やってる子よ

(少女)へぇ もう働いてるの?たっくましい




(トンボ)行こう みんなに紹介するから

(キキ)行かない さよなら

(トンボ)おっ? なんだよ!?ねえ、なに怒ってんの?

(キキ)怒ってなんかいないわ、私は仕事があるの ついて来ないで

(少女)トンボ 行くよ

ニャー

ニャー

(キキ)ジジ, あたしってどうかしてる? せっかく友達ができたのに急に憎らしくなっちゃう. 素直で明るいキキはどこかへ行っちゃったみたい. …? つめたいの. 

(キキ)ジジ いくらいい人ができたからって食事の時間は守ってほしいわ。ちっとも片づきゃしない

ニャー

(キキ)何よ 猫みたいな声 出して

ニャー

(キキ)ジジ?あなた 言葉どうしたの?キキって言ってごらん ジジ!ジジ!ジジの言葉が分からなくなっちゃった!!アッ大変!ハッ!魔法が弱くなってる…

(キキ)ハア ハア…アーッ!ウ…ンアアッ!あ…

(オソノ)飛べない!?魔法が消えちゃったわけ?

(キキ)とても弱くなっちゃったの…お届け物の仕事も休まないと…お店の手伝い きちんとやります!どうか あの部屋にいさせてください

(オソノ)かまわないけど…魔法の力って戻るんでしょう?

(キキ)分からないの ほうきは作れるけど…

(フクオ)オイ!

(トンボ)キキ? 僕 トンボ。飛行船から手をふったの見えた?テスト飛行に乗せてくれたんだ、もう最高だったよ!もしもし 聞いてる キキ?

(キキ)もう電話しないで…

(トンボ)エッ!? 聞こえないよ?船長が君に会いたいって…もしもし! もしもし!

(オソノ)どうしたの キキ 顔が真っ青よ

(キキ)私 修行中の身なんです、魔法がなくなったら何の取り柄もなくなっちゃう  

(オソノ)キキ!

(ウルスラ)ハアーイ

(キキ)ああ!

(ウルスラ)なんだ~ちっとも来てくれないんだから、自分から来ちゃったよ

(キキ)ごめんなさい

(ウルスラ)というのはウソ。買い出しに来たついで

(キキ)寄ってって! 今仕事がひと区切りしたとこなの

(ウルスラ)もちろん そのつもり。案外 いい部屋ね

(キキ)よかったら食べて… 今 お茶入れてくる

(ウルスラ)お茶はいいよ ミルクあったらくれる?

(キキ)ウン

(ウルスラ)本当だね あのヌイグルミ そっくりだ!君 ジジっていうんだろう?商売はどう 軌道にのった?うまくないの?

(キキ)今 お休み中なの

(ウルスラ)へえ、どうりで落ち込んでると思ったよ。魔法にも そんなことがあるんだね、ね 私の小屋に泊まりにおいでよ

(キキ)え?

(ウルスラ)店の人に断ってさ一日ぐらいいいじゃない。ジジ あんたも来るかい?ハハハ…彼女の方がいいか!ね 決めよう すぐ出発!




ニャー

(ウルスラ)来てるよ!

(ウルスラ)ハハハ…

(ウルスラ) ヒャー疲れたぁ…

(キキ)ステキ…

(ウルスラ)この美人が目に入らないのかしらね?エエッ!? 私を男だと思ったの?

(男) そんななりしとるもんな

(ウルスラ)はあ。この脚線美が分からないとはね

(キキ)カラス!?

(ウルスラ)すっかり友達になっちゃったんだ

(キキ)へぇ…

(ウルスラ)ヤッホー ただいま

(キキ)こんにちは この前はゴメンね

(ウルスラ)先に入ってて 水くんで来るから  



(ウルスラ)どう?

(キキ)ステキ…

(ウルスラ)キキに会ってね、この絵 描こうって決めたの。でも この子が決まらないのよね~キキが来るのをずっと待ってたんだよ

(キキ)これ 私?

(ウルスラ)まあね。ちょっとそこに座って モデルになってくれる?

(キキ)でも 私 こんなに美人じゃない

(ウルスラ)アッハハハ…あんたの顔 いいよ、この前より ずっといい顔してる。さ 座って、そのイスがいい。
ちょっと顔あげて 遠くを見るように、そう そうしてて。魔法も絵も似てるんだね、私も よく描けなくなるよ

(キキ)ほんと!? そういう時 どうするの

(ウルスラ)ダメだよ こっち見ちゃ

(キキ)私 前は何も考えなくても飛べたの。でも 今はどうやって飛べたのか分からなくなっちゃった

(ウルスラ)そういう時はジタバタするしかないよ、描いて 描いて 描きまくる

(キキ)でも やっぱり飛べなかったら?

(ウルスラ) 描くのをやめる、散歩したり 景色を見たり…昼寝したり 何もしない。そのうちに急に描きたくなるんだよ

(キキ)なるかしら…

(ウルスラ)なるさ、さあ ホラ 横むいて!

(ウルスラ)私さあキキくらいの時に絵描きになろうって決めたの、絵 描くの楽しくてさ寝るのが惜しいくらいだったんだよ。それがね ある日全然 描けなくなっちゃった、描いても描いても気に入らないの。それまでの絵が誰かのマネだって分かったんだよ、どこかで見たことがあるってね。自分の絵を描かなきゃって…

(キキ)苦しかった?

(ウルスラ)それは今も同じ. でもね, その後 少し前より絵を画くって事わかったみたい. 魔法ってさ, 呪文を唱えるんじゃないんだね

(キキ)うん 血で飛ぶんだって

(ウルスラ)魔女の血か. いいね, あたしそういうの好きよ. 魔女の血, 絵画きの血,パン職人の血. 神様か誰かがくれた力なんだよね. お陰で苦力もするけどさ

(キキ)あたし, 魔法って何か考えたこともなかったの. 修行なんて古くさいしきたりだって思ってた. 今日あなたが来てくれてとても嬉しかったの. あたし一人じゃ, ただ ジタバタしてただけだわ

(ウルスラ)あのね, この絵, ほんとは消しちゃおうかって何度も思ったんだよ

(キキ)こんなにステキなのに!?

(ウルスラ)今日 悩んでるキキの顔見たらさ“これだ!”って描けそうな気がしてきたの

(キキ)いじわる

(ウルスラ)ハハハ…だから あいこ

(キキ)フフフ…

(ウルスラ)さっ 消すよ

(キキ)うん。ベッド 取っちゃって悪いね

(ウルスラ)いいよ

(キキ)時どき ここに来ていい?

(ウルスラ)うん 夏中はいる気だから私も時どき会いに行くよ

(キキ)ウン




(TV)
豪雨のため, 当市に不時着した飛行船 '自由の冒険号'はこのほど修理を斉ませ, 本日南極探険の旅を再開することになりました

(オソノ) はい グーチョキパン店です。ああ キキ、うん。もっとゆっくりしていてもいいのに。あ~ それからねこの前のお婆ちゃんが また来てくれって。どうする? 断ろうか?当分お休みって言ったんだけどったんだけど どうしてもって言うのよ. そう, じゃ 帰りによってね.

(キキ)はい

(キキ)こんにちは

(バーサ)まあまあ さっ お待ちかねですよ

(TV)出発まで あと5分も余ってる頃となりました.

(キキ)参りました 奥さま

(婦人)いらっしゃい。今日はこのままで勘弁してね、お天気がいいのに足が痛むの。バーサ あれを

(バーサ)ハイハイ 奥さま 飛びましたか?

(婦人)まだよ、おかしいのよ。この人 飛行船に夢中なの

(バーサ)冒険が好きなんですよ

(婦人)ちょっと音 小さくしてね。キキ この箱をちょっと開けて

(キキ)ハイ・・・・奥さま これ…

(婦人)それをキキという人に届けてほしいの、この前 とってもお世話になったからそのお礼なのよ。 ついでにその子のお誕生日を聞いて来てくれると嬉しいんだけど. またケ-キを焼けるでしょう? キキ?

(キキ)きっと, きっと, その子もお婆さまのお誕生日を知りたがるわ! プレセントお考える楽しみができるから!

(婦人)ほんとね

(キキ)フフフ…

(テレビの音をあげる)

(ノイズの音)

(婦人)どうしたの?

(バーサ)何か事件が起きたようですよ

(TV) 大変です! !ロ-プが切れました!! 飛行船が流されています!!うわ, 飛行船が我我の……うわああ~~!!

(バーサ)ああ 肝心な時に何を映したんだよ

(婦人)夏に時たま こういう風がふくの じきにここへも来るわ

ゴオオオビュウウウウ

(婦人)大丈夫 通り過ぎるだけよ

(バーサ)奥さま! うつりましたよ。逆さまになってる

(婦人)こうなると ただの風船ね

(TV) 飛行船自由の冒険号は突然の……残された最後のロ-プを伸ばしに……飛べる事が出来るでしょうか.ああ!! 駄目です!! すさまじいヘリウムが、ガスの力で うえに……


(キキ)トンボ! あの子 私の友達なの!

(婦人)エッ!?

(TV)少年が一人 パトカーと一緒に…

(キキ)トンボ!

(婦人)あなたのお友達ですって?

(キキ)私 行きます!

(婦人)気をつけてね

(キキ)大変!

(船長) がんばれ 手を離すな しっぽのヘリウムを抜け 急げ

(キキ)ハア ハア…トンボ!男の子は無事ですか?

(町人)さぁ? パトカーは落ちたっていってたけど

(サイレンの音)道を開きなさい!! どきなさい!! 早くどきなさい!!  

(老人) 大丈夫かね?

(キキ)おじさん!!そのブラシを貸してください

(老人)へっ?

(キキ)お願い 必ずお返しします

(老人)そりゃ まあ…

(キキ)すみません!

(老人)ああ…

バリ バリ バリ…

(キキ)うわあ----!! 飛べ!

(老人)飛んだー!

(キキ)あっ!ワア!まっすぐ飛びなさい! 燃やしちゃうわよ

(TVアナ)少年はまだ 無事ですが飛行船 '自由の冒険号'は風に流されてシティ-タワ- に近付いて行きます! このままではシティ- タワ-との衝突は避けられません!!

(トンボ)ぶつかるぞー 高度をあげろーっ

(船長) ガスが足りない! ぶつかる寸前に塔に飛び移れ!

(トンボ)やってみます

(時計番) おお~い。ここへ来いよー!

(トンボ)おじさん 逃げてー!

(時計番) つかまれぇ

(キキ)ハッ! もっと早く!コラーッ

(警官) アアッ?




(TVアナ) すごいガスもれの音です少年はどうなったのか, この角度からは見えません!!!あっ! しっぽが!ガスが抜けて飛行船が倒れます!引っかかった! 止まりました。あーっ! あそこを見ろーっいた! 少年がいました!奇跡です 少年はぶら下がっています!だが どうやって助ければ良いのかこのまま あの勇敢な少年を見捨て…な… なんだあれは!?鳥… 違います 少女だ!少女が空を飛んで行きます!デッキブラシに乗った魔女です!

(婦人)キキよ

(バーサ)それっ!

(オソノ)あの子 飛んだわ!

(ケット)がんばれ。

(キキ)トンボ!

(トンボ)キキ!

(キキ)コラッ! いいこだから言うことを聞いて

(船長) おい! 頑張れ!! もうちょっとだ!! 頑張れよ--!!

(キキ)トンボ!

(トンボ)キキ

(声援が響く)

ガンバレ! もうちょっとだ
ガンバレ ガンバレ
ガンバレー

(トンボ)ワーッ!

(TVアナ)受け止めた!! 空中で 受け止めました!!

(大歓声)

(TVアナ)
今 地上に降り立ちました。 感動的な光景です! 飛行船の乗員も無事のようです

(老人)あのデッキブラシはわしが貸したんだぞ

(婦人) ははは, やめてよ バ-サ! あははは

(オソノ)偉いよ キキ よくやったねぇ。ハッ! あんた!先生を呼んで 産まれそうよ!

(フクオ)オイ…

(キキ)あっ ジジ!

ニャー  


♪小さい頃は神さまがいて

♪不思議に夢をかなえてくれた

♪やさしい気持で目覚めた朝は

♪おとなになっても 奇蹟はおこるよ

♪カーテンを開いて 静かな木漏れ陽の

♪やさしさに包まれたなら きっと

♪目にうつる全てのことは メッセージ

父さん : 母さん!! キキからの手紙だよ!!

母さん : ええ!? あっ!!

父さん : お父さん, お母さん, お元気ですか? 私もジジもとても元気です.

キキ(声) : 仕事の方もなんとか軌道に乗って, 少し自信が付いたみたい. 落ちこむこともあるけれど, あたし, この町が好きです.


♪小さい頃は神さまがいて

♪毎日愛を届けてくれた

♪心の奥にしまい忘れた

♪大切な箱 ひらくときは今

♪雨上がりの庭で くちなしの香りの

♪やさしさに包まれたなら きっと

♪目にうつる全てのことは メッセージ