尊厳意識(ディグニティー・コンシャスネス)とは?
ハーバード大学 ドナヒックス博士の著書『ディグニティー』に出会うまでは、尊厳というと「尊厳死」という言葉くらいしか馴染みがありませんでした。
実際、医療や介護、認知症の患者さんと接する場で、仕事上、必要な知識としてよく登場するようですが、もっと普遍的なもののように思います。
現実をみていると「個人の尊厳」に対する無知が、夫婦間、親子間、職場など、ごく身近なところで、たくさんの争いやトラブルを生み出している、ということがだんだんわかってきました。
ぼく自身、過去を振り返ると、尊厳のことがまったくわかっていませんでした。
家庭や学校でも、きちんと学んでいないので、結局、自分が傷ついたとき、相手を傷つけたときが、尊厳の大切さに気づくチャンスだけど、お互いが傷ついたままでいたら、苦しいままの人生が過ぎていきます。
自分らしさを取り戻すためにも、尊厳を修復する必要があります。
尊厳がすべての人間関係の土台である
という見方は、日常で聞くことも少ないです。
なぜここまで強い関心を持つようになったかというと、やはり長年、太極拳の道場に通い続けてきて、「たどり着いた意識」に通じるものがあったからです。
太極拳の意識は「自ら攻撃せず、逃げず、相手から離れず、相手とぶつからず、ただ守る」という意識です。
合気道にも似ていますが、相手と一体になる、という意識です。
相手は時に、突然攻撃してきたり、逃げたり、無視したりします。
そういう相手の「気変わり」に、全部反応していては疲れてしまいます。
「尊厳意識(ディグニティー・コンシャスネス)」は、あなたが、つながりたい人とつながる力を生む、ということです。
尊厳モデルの基本となる考え方「I」と「Me」
自分の中には主体と客体、「I」と「Me」があります。
アメリカの哲学者、心理学者で、1885年にハーバード大学の教授になったウィリアム・ジェームズが提唱した考えとして紹介されています。
社会心理学者のジョージ・ハーバート・ミードも彼の講義を受けたひとり。
IとMeについては、こちら創造法編集社さんのページで詳しく解説されています。
【基礎社会学第二十四回】G・H・ミードの「主我と客我(IとMe)」とはなにか
IとMeについて、自分なりの解釈で、こんな図を作成しました。
戦うか、逃げるか、知らんぷりをするという「自己防衛本能」は、人間の本能だけに、誰でも持っています。
過去の体験や知識に条件づけられた自分です。
子供の頃から、現在に至るまで、主体性を大切にする、親、職場、コミュニティとかかわっていれば、自然に主体性は育ちます。
だれもがそんな環境に恵まれて人生を歩んできた人ばかりではありません。
ぼくもそうでした。
主体性が育っていないと、反応的な自分が行動を決めてしまいます。
人間関係においても、他人の反応に依存するようになります。
自己防衛本能に支配されていると、当然、健康的な、人とのつながりを築くことができません。
一方で、人とつながりたい、というのもまた、自己を広げる本能です。
人はだれでも、幸せでいたい、豊かな人生にしたいと、心の奥底で願っています。
それが主体的な自分です。
主体的な生き方は、自分が無意識のうちに選択している自己防衛本能に気づき、行動、思考の壁の先を見通すだけの意思を身につけること、自己拡大に意識を向けることで、実現できると考えています。
つまり、戦わない、逃げない、知らんぷりをしない。
そのためには、どのように考え、どのような言動を選択するのか、そんなことを尊厳コミュニケーション塾で話しています。
ハーバード大学 心理学教授 ドナ・ヒックス博士について
いきがいカフェ協会を作ったのは、ハーバード大学 心理学教授 ドナヒックス博士の”Dignity(尊厳)”の尊厳モデル(10の要素、10の心理的誘惑)に出会ったことが一つのきっかけでした。
ヒックス博士のホームページを開いてみました。
Home - Donna Hicks (drdonnahicks.com)
ページの冒頭で、南アフリカのアパルトヘイトの解体に貢献されたデズモント・ツツ大司教がこの著書にメッセージを送られています。
「この本は、日常生活と周りの世界で平和を体験したい人々にとって必読です。もし平和を望むのであれば、すべての人の尊厳が守られていることを確かめてください」
“This book is a must read for those who want to experience peace in their everyday lives and peace in the world around them. . . . If you want peace, be sure everyone’s dignity is intact."
—Archbishop Emeritus Desmond Tutu
つまりは、尊厳とは何かを知ること無しに平和は訪れない、ということ。
この本でも紹介されていますが、ヒックス博士は、2年前にお亡くなりになったツツ大司教と共に、紛争調停のファシリテーターをされるなど世界平和の実現に向けて活動されていました。
ヒックス博士の長年のファシリテーターの経験に基づいて書かれた本ですが、内容は、国際紛争の話がメインではなく、人間一人ひとりの関係性について焦点を当てたもので、とても身近に感じるエピソードが多く含まれています。
尊厳とは何かを知るきっかけになればと思い「尊厳コミュニケーション塾」を毎月1回、定期的に開催していくことにしました。
尊厳コミュニケーターになりませんか?
これから、尊厳コミュニケーション塾を月1回ペースで開催していきます。
ぼく自身が何か講義をする、というよりも、尊厳コミュニケーションの実践の場として、交流の場をご提供することを考えています。
尊厳意識は、行動して感じられるものであって、知識を詰め込んでも、自分の頭だけで理解できるものではないからです。
「尊厳10の要素」を実践することで、どう変わったかをシェアしあえたらいいなと思っています。
尊厳10の要素は度々シェアしていますが、ここでもう一度、列挙すると、
1. アイデンティティを受け入れる
2. 仲間に迎え入れる
3. 安心できる場をつくる
4. 存在を認める
5. 価値を認める
6. 公正にあつかう
7. 善意に解釈する
8. 理解しようと努める
9. 自立を後押しする
10. 言動に責任を持つ
この10個です。
多くの人が、この10の要素を当たり前のこととしてやっていることかもしれません。
ただ、尊厳意識で相手とつながることをゴールとすれば、もっと人間関係が深まると思うんです。
なぜなら、自分の尊厳意識は、相手の尊厳意識を引き出そうとするからです。
ドナさんが「自らの尊厳を相手の目の中に見出したときに初めて、その真価を理解するのです」と、著書のまえがきに書かれています。
相手の尊厳とつながった瞬間です。
その人の人生で、だれか一人でも、尊厳でつながれる、そういう人と出会えたら、救われる命もあるんじゃないか、と思ったりもします。
今夜が第1回目ですが、いきなりドナ・ヒックス博士の著書の内容を詳しく解説するよりも、まずは尊厳についての認識を共有するところから、雑談的に始まるのがよいかなと思います。
いま、<尊厳コミュニケーター>という、尊厳意識を伝える役割を持つ人の存在の必要性を強く感じています。
心身の健康、社会的に健康である状態〜ウェルネス(ウェルビーイング)実現のためであり、「生きがい」が感じられる人生の実現のためです。
この生きがいを語り合えるコミュニティ「いきがいカフェ」で、尊厳コミュニケーターを育てる活動をしたいです。
リザーブストックの公式トレーナー、自分生き経営塾のアシスタント講師としても、個人の起業のお手伝いをしていますが、お客様と長く続く関係を築くためにも、ものすごく大事なことだと考えています。
2冊目の著書『尊厳のリーダーシップ』では、尊厳の3つのC(コネクション=つながり)という概念が紹介されています。
まず1つ目は、あなたが、自分自身の尊厳とつながること。
2つ目は、あなたが、大切にしている人の尊厳とのつながり。
そして3つ目は「自分よりも大きな存在」とのつながりです。
3つ目のCは、あなたがかかわるすべての存在。
家族や会社、コミュニティ、国家、地球。
神、サムシング・グレートともいえます。
一緒に学んでみたいという方が集まったら『ディグニティー』翻訳者のワークス淑悦さんをお招きしたワークショップもまた開催したいです。
ぜひ、お待ちしています!
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