浮気事件簿 養育費どうなってるの
1年前、彼女は養育費の入金が止まっているのに気づいた。さっそく元夫に催促の手紙を書いたが、1週間待っても返事がこない。しびれを切らし、自宅や携帯に電話をしたが、いつも留守電だった。
彼女は頭に来て彼が勤める保険会社に電話をし、彼を呼び出した。
彼女は会うなり文句を言った。「養育費はどうなっているの?」「ああ、忙しくて忘れてた」「忘れてたはないでしょ。別れてもあなたの娘よ!」「おれさ、2週間後に再婚するんだよ。相手もバツイチで子どもがいるんだ。養育費、勘弁してくれないか」
突然飛び出した彼の再婚話に、彼女はあっけにとられた。しかし、ひるんではいけないと思い、冷静を装って言った。「そんな勝手なこと、許せないわ!」。結局、その場は話がつかなかった。
娘を育てる大切なお金だ。なくなると困る。彼女は離婚した友人に相談してみた。
「いざとなったら給料を差し押さえるって言ってやったらいいわ。彼も困るわよ」
「差し押さえ?」
「給料の一部をあなたの口座に振り込んでもらうの。会社に知れて格好悪いでしょ」
彼女は少しホッとした。
翌日、彼女は彼と交渉しようと会社に電話した。ところが……。「先月末で退職されました。どちらに転職されたかはわかりません」
電話を切ると、彼女は彼をつかまえるべく彼の自宅へ走った。
【アドバイス】差し押さえ、間接強制も可能
養育費は子どもの権利なので、再婚しようがその子の親にかわりない者は、支払い義務を免れることはできない。
養育費の支払いを公正証書にしておくと、不払いが起きたときに相手が将来受け取る給料を差し押さえ、毎月の給料から天引きして振り込んでもらえる。差し押さえは原則手取り額の2分の1まで可能だ。ただ、天引き分を自分の口座に振り込んでもらうには会社と交渉が必要になる。
このケースのように相手が転職すると改めて手続きが必要になるが、転職先が不明だと差し押さえは事実上できない。その際は今年4月の法改正で可能となった間接強制を使う。これは一定の制裁金を課すことで支払いを強制する手続きで、裁判所に申し立てる。将来分のうち間接強制で認められるのは直近6カ月分。彼女も条件が整えば、この手を使うのがいいだろう