観てきたー。
面白かった、というより凄かった。
最近の映画はゼログラビティ然り、迫力のクオリティを技術でどうこうできるようになってきてて、この技術の向上っぷりを観るのも楽しみ。
銃弾の音が、お腹に響くくらいの低音でズドン、ズドンって鳴り響くんだ。すごい強い音で、しかもそれが引き金を引くたびに鳴るものだから、大きな音に慣れていない私は映画館なのに気が狂いそうになった。あんなのを間近で聞き続けている兵士たちは、もっと酷いんだろうな。
さて、アメリカン・スナイパー。
米軍史上最多、160人を狙撃した一人の父親の物語。
実在する狙撃手クリス・カイル(ブラッドリー・クーパー)を描いた作品。
敵側にどんなドラマがあったのか、想像するだけで鳥肌が立つけれど、物語は全てクリスの視点で続く。
もう、ハラハラしまくりの130分だった。
小説によると、どうやら彼は最初はカウボーイで生計を立てていたそう。あるとき思い立って米軍に志願し、初の戦場で6人も射殺。
戦場で6人って多いのと言えば、これはめちゃくちゃ多い。普通は0か、1人撃てただけでも褒められるレベルだそう。生身の人間に対して銃口を向け、引き金を引くなんて残酷な行為を、普通の神経を持っている人ならば躊躇うからだ。
それに、ただの市民を撃とうものなら、即刻軍事裁判にかけられ、除隊どころでは済まされないからだ。
それをやってのけたクリスは、初日から「英雄」と呼ばれ、メンバーから讃えられる。誰にもできないことができたのだから、当然だ。
それは名誉なのかどうか分からないけれど、彼らにとっては英雄なのだ。
そして、クリスは二回、三回、四回と戦地へ赴く。初陣こそ「英雄」と笑顔で迎えられたけれど、その活躍振りに、次第に皆の顔が曇ってゆく。クリスが搭乗する戦車には、常に映画「パニッシャー」のドクロのエンブレムがペイントされている。これには、「自分たちも悪」だと自覚しているためらしい。
あと、敵側の視点が語られなかったから、これは想像するしかないのだけれど、というか、これはクリスの映画であって、敵側の視点は映画監督クリント・イーストウッドの想像なのだろうけれど。
敵側に強いスナイパーが出てきて、クリスと何度か対峙する。
ここでいう強い、とは、度を越えた長距離射撃ができ、地の利に長け、元五輪選手という高い身体能力を生かせることから強いスナイパーだ。
こいつはクリスの味方を何人も何人も殺す。非道な戦士というよりは、強い戦士のように描かれていた彼は、あるワンシーン、一瞬だけれど、妊娠している女性と同室にいる場面が出てくる。
彼もクリスと同じような境遇だったのではないか、と想像した途端、彼に向かって引き金を絞るクリスを止めたくなった。
そして、ああ、これが戦争なんだって思った。
実際に自分がその場にいても、きっと止めない。クリスが殺す人間にどれほどのドラマが詰まっていたとしても。それが戦争だから。
面白かった。良い映画だった。
日本も戦争に参加するような雰囲気(自衛隊の活動範囲拡大は、どうも戦争作りの口実に聞こえてならない)を醸し出しているけれど、今の日本人に足りないものはこれかもしれない。
ジャーナリスト二人が死んだくらいで大騒ぎするような国なんて、どれだけ平和なんだ、と思い知った。
という色んな刺激をもらえる面白い映画だった。
あ、ところで最近の問題を取り組んだ作品だからかなのか、あるいは当たり前のことだからか分からないけれど、ブラッドリー・クーパーの変わりよう(役作りによる筋力増量)にびっくりした。
ハング・オーバー!!!以来だったけれど、やっぱハリウッドって凄いわ。
堺雅人が南国料理人で役作りのために数十キロ増量してるなんて言われていたけれど、数字の問題じゃない。堺雅人も太った堺雅人も堺雅人だけど、あのブラッドリー・クーパーはクリス・カイルだった。
見習うのだ日本よ。話題づくりとか建前とかどうでもいいから。良い映画を作ってくれ。
終わり。