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潜水服はモスラの夢を見る

主に映画の感想を語るブログです。

*本記事は2018年3月19日にyahooブログに投稿したものです。yahooブログ閉鎖に伴い、こちらに転載しました。

ちはやふる ー結びー

 

制作国:日本(2017)

日本公開日:2018/3/16

監督:小泉徳宏

脚本:小泉徳宏

出演:広瀬すず、野村周平 他

 

あらすじ:3年生になった千早(広瀬すず)たち瑞沢高校競技かるた部は新たに新入部員として花野菫(優希美青)、筑波秋博(佐野勇斗)を迎える。しかし、太一(野村周平)目当てでカルタには全く関心がない花野と、実力はあるが協調性が無い筑波に手を焼かされていた。そんな中、太一は新(真田真剣佑)が千早に告白したことを知る。それをきっかけに太一は地区予選直前に部を離れてしまい…。

 

評価:★★★★★

 

感想(ネタバレなし):『ちはやふる』は私は映画で存在を知り、『上の句』『下の句』を観た後に現時点で刊行されている単行本(37刊まで)全て読むほどはまってしまいました。ですから今回の映画も楽しみにしていたのですが、期待はあまりしていませんでした。というのも『上の句』は傑作だと思うのですが、『下の句』はそれに比べると少しトーンダウンした感が否めず…。このまま右肩下がりに悪くなってしまうのではないかと危惧していたのです。

 

しかし、結論から言うとめちゃくちゃ満足できる出来に仕上がっていました。今作は「情熱の継承」ということがテーマになっており、それが言葉ととして表出されたのは一瞬だがその想いは現代にも受け継がれている、という百人一首の在り方になぞらえて語られています。原作漫画には色んな要素がありますが、よくそこからこのテーマを抽出してまとめたなぁと感心しました。小泉監督ありがとう疑ってごめんなさい

 

瑞沢高校競技かるた部のキャストのアンサンブルは相変わらず素晴らしいです。原作は千早と太一以外のキャラクターは最近試合に出なくなってしまったので、かるた部創設に関わった5人にフォーカスを当て続けているのは映画ならではの魅力と言えるでしょう。特に肉まん君は、原作とはキャラクターが少し違うのですが、映画ではかるた部の高校の部活らしい雰囲気を作ることに凄く寄与していて、とてもいいアレンジだと思います。

 

新キャラクターの二人も良かったです。特に花野を演じた優希美青は凄く原作のイメージに近かったです。

 

 

 

*以下ネタバレです。

 

 

 

 

ネタバレ:太一抜きで地区予選を迎えた瑞沢高校競技かるた部は辛勝で全国大会への切符を手にする。千早は太一の不在を受け入れて練習に励み、かるた部は次第に新入部員2人との絆を深めていく。その一方で千早は自分の進路について悩み始めていた。

予備校に通う太一は、競技かるたの名人である周防(賀来賢人)に出会う。周防の『かるたは好きじゃないが、それしかなかった』という言葉に心を動かされ、太一は周防のもとで再びかるたを取るようになる。

迎えた全国大会で瑞沢高校かるた部は決勝戦に進出する。決勝で新率いる藤岡東高校と対戦することになり、そこに戻ってきた太一が合流する。新と対戦して運命戦にもつれ込んだ太一は、どの札が読まれるかの読みを的中させ、チームを全国優勝に導く。

表彰式の後、千早は顧問の宮内(松田美由紀)に自分の進路希望を書いた用紙を提出する。数年後の近江神宮には、瑞沢高校競技かるた部の顧問になった新任教師の千早の姿があった。

 

感想(ネタバレあり):原作との主だった相違点については以下のようなものがあったと思います。

①瑞沢高校かるた部が全国を制するのは、原作では千早たちが2年生のときのこと(映画では3年生)

②原作では千早たちの学年と花野、筑波の学年はひとつ違い(映画ではふたつ違い)

③原作では千早たちが全国大会の決勝で当たるのは富士崎高校(映画では藤岡東)

④地区予選の1回戦対北央高校戦で札合わせに失敗するのは千早のミス。(映画では筑波のミスになっている。ちなみに原作ではここで太一が敵陣を抜きに行くことでひょろ君のお手付きを誘うくだりがあり、この展開は映画『上の句』のクライマックスに使われている)

⑤原作では部を離れた太一は、近江神宮に部の応援には来るが、既に退部しているので試合には出ない。(映画では決勝戦に出る)

 

上の感想でも述べた通り今作は「情熱の継承」がテーマになっています。千早や太一が原田先生などの先人から継承し、その千早たちもまた後輩たちに継承する立場になるというのが今作でした。最後の決勝戦で瑞沢高校の3勝を勝ち取るのが千早と太一と後一人は誰なのか、というところにも今作のテーマがさりげなく盛り込まれていたような気がします。

 

個人的に今作の良かったところは、クライマックスに『上の句』で描かれたチームスポーツとしての熱い展開がもう一度描かれるところです。『下の句』は少し内省的な話が続いたのでその反省なのかもしれません。

 

欲を言うと太一が部を離れて戻ってくるくだりはもう少し工夫が欲しかった気もします。よく考えると太一が部を離れた理由と戻ってきた理由は実は噛み合ってはいないんですよね。文脈は違うのですが、原作にあった周防名人の『君は持っているものを大切にしなさすぎる』のセリフは太一が部に戻る上であっても良かった気がします。そのセリフと自陣の札を守りきる太一の守りがるたのスタイルが重なる…とかしたらおもしろかったかもしれません。

 

ただそれでも、漫画原作の映画化として凄く良くできていることは間違いありません。あくまで『上の句』『下の句』を観ていればという前提ですが、傑作と言っていいレベルの作品だと思います。