潜水服はモスラの夢を見る -23ページ目

潜水服はモスラの夢を見る

主に映画の感想を語るブログです。

*この記事は2018年7月22日にyahooブログに掲載したものです。yahooブログ閉鎖に伴いこちらに転載しました。

バトル・オブ・ザ・セクシーズ

         

制作国:アメリカ(2017)
上映時間:122分
監督:バレリー・ファス、ジョナサン・デイトン
脚本:サイモン・ビューフォイ
出演:エマ・ストーン、ルイ・カレル 他

あらすじ
73年、女子テニスの世界チャンピオンであるビリー・ジーン・キングは、女子の優勝賞金が男子の8分の1であるなど男女格差の激しいテニス界の現状に異議を唱え、仲間とともにテニス協会を脱退して「女子テニス協会」を立ち上げる。そんな彼女に、元男子世界チャンピオンのボビー・リッグスが男性優位主義の代表として挑戦状を叩きつける。ギャンブル癖のせいで妻から別れを告げられたボビーは、この試合に人生の一発逆転をかけていた。一度は挑戦を拒否したビリー・ジーンだったが、ある理由から試合に臨むことを決意する。

評価:★★★☆☆

◆感想(ネタバレ無し)
私自身がテニス観戦が好きなので非常に楽しみにしていた作品です。

ビリー・ジーン・キングは現在も存命の方で、リアルタイムで試合を観たことのない私でも名前を聞いたことがあるテニス界のレジェンドです。今作の序盤でキング夫人が全米テニス協会を脱会しますが、実はその全米テニス協会が主催する全米オープンの現在の会場名が「ビリー・ジーン・キングナショナルテニスセンター」となっています。物凄い掌返しですね

劇中でキング夫人と対戦するマーガレット・コートも存命のテニス界のレジェンドなのですが、実はこの方、昨年同性愛に対して非常に否定的なコメントを発表したことで、かなり批判を受けています。今作でフェミニズムの話でありながらあまり深く彼女が描かれないのはそういった事情があるからなのかもしれません。

お話自体は基本的には面白かったのですが、割と重要なある点が気になってしまい、そのために評価はちょっと低めです。この点についてはネタバレありの感想で書きたいと思います。

素晴らしかったのはクライマックスのキング夫人vsボビーの試合のシーンです。動きなどすごくリアルで、かつ今のカーボン製のラケットとは異なる、当時のウッドラケットでのスウィングを忠実に再現していてとてもクオリティが高かったです。

序盤の方で、エマ・ストーン本人がプレーしていると思われるシーンもとてもきれいなフォームでした。アカデミー主演女優賞を獲得した『ラ・ラ・ランド』でもダンスシーンがありますが、身体能力が高い方なのでしょう。


*以下ネタバレです



◆ネタバレ
キング夫人はツアーの道中で知り合った美容師のマリリン(アンドレア・ライズボロー)と関係を持ってしまう。そのことを夫のラリーに気づかれてしまい、動揺した彼女はマーガレット・コート(ジェシカ・マクナミー)に敗れランキング1位の座を明け渡すことになる。

ボビーはNo1となったマーガレット・コートを対戦相手に指定し、圧倒的なスコアでコートを倒す。その光景を見たキングは自分が戦うしかない事実を受け入れる。

試合前にマリリンと和解したキングはボビーをストレートセットで下す。敗れたボビーも妻と復縁し、生涯添い遂げることになる。


◆感想(ネタバレあり)
予告編ではキング夫人と対戦するボビーは男性至上主義の悪者のような印象を強く残しますが、あくまでそれは観客の注目を引くための手段として男性至上主義を語っていただけであって、本気で彼は男性至上主義を語ってはいません。史実としてもキング夫人とボビーの仲は良好だったようです。

それだけに今作で一番気になったのは、ズバリ史実としてこの試合を真剣にフェミニズム運動として捕らえていた人はどの程度いたのだろうかという疑問です。エキシビジョンマッチですし、正直そんなに真剣なものではなかったのではないかと思うのです。男と女、現役選手と引退した選手という絶対に対戦することのない二人が戦ったらどうなるだろう、というもっと無邪気な娯楽性の高いものだったのではないかという気がするのです(ゴジラvsガメラみたいな)。今作で一応悪役として描かれる全米テニス協会の人々が、女性の権利運動を鎮静化するために物凄く真剣にボビーの勝利を祈っていますが、なんだかそれが凄くこっけいに見えてしまいました。

今作の序盤で全米テニス協会の責任者クレイマーが「男子の試合の方がおもしろいから賞金が高い」というシーンがあるのですが、これは一介のテニスファンとして悩ましいセリフです。というのは倫理的に男女不平等はおかしいと思いつつも、確かに男子の試合の方がスーパープレーが多くて、動きの面では面白いというのは一面の真実ではある気がします。現実問題として、テニス4大会の賞金額が男女同額になったのはつい最近の出来事なのです。もし、テニスを題材に男女平等を描くのならば、ここで賞金同額のために奔走した人達の活躍を描く映画を作って欲しかったと思いました(最近のこと過ぎてお話が作りにくいかもしれませんが)。

◆まとめ
・テニス関連の描写は良い
・この題材(試合)自体はフェミニズム運動というよりもっと娯楽的なものだったのではないかという気がする