アリステア・マクリーン『北海の墓場』(ハヤカワ文庫) | 灰色の脳細胞:JAZZよりほかに聴くものもなし

アリステア・マクリーン『北海の墓場』(ハヤカワ文庫)

アリステア・マクリーン

 

後期マクリーンの衰えはつとに知られているが、本書はその典型例。

もともと『ナヴァロンの要塞』に見られるように、冒険小説に推理小説の味わいを加えて抜群の効果を出すのがマクリーンの得意とするところであったが、本書は冒険小説の要素がまったくなく、孤島物といわれる推理小説の凡庸な例となっている。

マクリーンらしく吹雪の吹き荒ぶ海に漂う船中で起きる連続殺人という意外に面白そうな設定なのだが、犯人指摘にいたるロジックも別段見どころがなく、極めて退屈な一編となってしまった。

「私」の語りが達者なのでそこそこ読めるが、これがマクリーンの作品かと思うと少々悲しい。

 

★★☆☆☆

 

Bear Island
By MacLean, Alistair

London: Collins, 1971. First Edition. Hardcover