『図解 思考は現実化する』(きこ書房):胡散臭いセールスとは裏腹の良質なナポレオン・ヒル解説本 | 灰色の脳細胞:JAZZよりほかに聴くものもなし

『図解 思考は現実化する』(きこ書房):胡散臭いセールスとは裏腹の良質なナポレオン・ヒル解説本

$灰色の脳細胞:JAZZよりほかに聴くものもなし
ナポレオン・ヒル財団アジア 太平洋本部
図解 思考は現実化する―金持ちビジネスマンになるための17の方程式(ゴールデンルール)』(きこ書房)

この会社は7桁もするようなバカ高いプログラムを売り込む胡散臭いセールスで有名だが、書籍に添付されているはがきやメールなどで個人情報を送ると、後日もれなく彼らから電話がかかってくる。

この電話が実に不快で、セールスマンのトークを聞いていると確かに自己啓発の必要性を感じるのだ。

「いまあなたは大金持ちになるチャンスを逃しました」
「一生、だめなままですか?」
「つまらない人生でいいんですか?」


などと喧嘩を売っているのかと思えるようなトークを連発するのだが、これを楽しめるようなプラス思考を獲得せずして「金持ちビジネスマン」になろうとは百年早いというものだ。まあしばらく聞いていると、あまりの押しつけがましさと突っ込みどころ多数のために、楽しくなってくるので心配はいらない。


そんなところの本であるからさぞやばいのだろうと思いきや、エマーソン、ウィリアム・ジェームズといったアメリカン・ニューソートの変容であるナポレオン・ヒルの思想を本書はよくまとめている。思想のみならず、その具体的なテクニックをよく整理して紹介しているのだ。まあ自己啓発系技術の元祖のようなひとなので、マニアにとって真新しさはないが、右に説明文、左に図解といった構成は、こういったものがはじめての読者にとってかなり簡便である。面倒なら絵だけ見ていても参考になる。

では、彼の思想とは何か。タイトルそのままで「思考は現実化する」なのだが、つけくわえるならば、「ひとは自分がイメージする以上の状況や環境におかれることはない」。

つまり想像で描く世界とは、日常の世界をつねに凌駕しているのだ。幸福であろうと不幸であろうと自分の身に起こることは、自分の想像しうる範囲内でしかない。したがって幸福であろうというならば、どうしようもなく果てしなく幸福なイメージを具体的に描く必要がある。

そのイメージがいかにして「現実化する」のかについては、それこそ本書やヒルの書籍にあたってもらうのが一番なのだが、彼のいっていることはそれほど奇矯ではなく、さまざまな思想家やエッセイストなどが主張し実践してきたことと大差はない。それを実践するためのテクニックを加え、誰でもこなせるものだよと提唱したところにヒルの独自性がある。

その肝は、

「具体化」
「細分化」
「習慣化」


にある。

が、これ以上はまた別の機会にでも。

まとめておく。ヒルの考え方、テクニックをうまくまとめ、初心者でも簡単に理解することができるなかなかの良書。ただしセールスで遊ぼうというひと以外は、はがきやメールなど個人情報は送らない方がよい。

★★★★☆
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ