ようやく入手した又吉直樹の「火花」をかわぎりに、図書館でちょっとふるい本を何冊か借りてきた。どこにも行けないお盆ウィークはさほど忙しいわけでもなく、活字を読みたくて読みたくて仕方がない病。1日一冊のペースでぐんぐん読めるのは、子どもが成長したおかげでもあり、爺を預かってくれる老人の施設があるからで、そんな今にとっても感謝です。
セレクトしたのは、割と好きな作家さんのばかりと、タイトルから手にとって読みたくなった世界というのかな。読み始めるとものすごい集中力で、外を歩く時も日傘を差して読みながら歩く二宮金次郎並みの勤勉さ。歩きスマホならぬ歩き読書。
おもしろかったのでここ何日かで読んだ分だけ、ちょっとここでご紹介します。
『火花 』又吉直樹
私はTVほとんど観ないので、お笑いの又吉を知らないのですが、、、この本、賛否両論あるとは思うけど、毎日限界ギリギリで生きている私にとっては、すごくすごくおもしろかった。山場がなかった、、、という感想をお持ちの方もおられたようですが、もうね、これ、毎日積み重ねていくその些細な日々がドラマなんですの。しかも標準語ではなく関西弁で会話のやり取りがあるのも、又吉がそうだから当然といえば当然だけど、そこもまた絶妙な人間の悲哀を表すツールとなっていて、胸がぎゅうぎゅうと締め付けられる思いでした。
そして、ことお笑いの世界を介して伝えているのに、人間の悲哀がテーマと言う視点。一般人はお笑いの芸人はよほどのマニアでないと劇場まで足を運んで観ないけれど、お笑いの世界こそ続けることはものすごく大変で、信念がない限り、ごまかせないのではないか?と感じました。
なぜ芥川賞なのか?という人もいるかもしれませんが、芥川賞がどの基準かどうかよりも、このお笑いの世界に生きる人間の悲哀をクローズアップした新しさとか、表現、つまらない言葉のやり取りにすらお笑いのセンスが含まれていて、いちいち笑える。生きている限りバッドエンドはない。全身全霊で生きている姿を、たとえ人としてすべてを理解できないとしても、ここで生きていくんだと腹を据えている徳永と神谷のできそこないの感じに、すごく自分を投影できて笑えて泣けた。
『愛がなんだ』角田光代
2003年の小説なので、設定がちょっと一昔前なのだけど(たとえば連絡手段は、携帯電話とメールの時代)それもまたオツなコミュニケーションとなっているストーリー展開。主人公の山田テルコは、いわゆるダメ男ばかりと付き合ってしまう傾向がある28歳契約社員、、、も切られ、今はアルバイトで凌ぐフリーター。そんな自分に気づきだした頃、出会ったマモちゃんという小男に、都合がいい女としか見られていないのをわかっているのに関係を断てずマモちゃんからの要求を第一に優先してしまう大バカ女。マモちゃんの好きなすみれさんが登場したり、親友の葉子の複雑な家庭環境、そして葉子をいちずに好きなナカハラ君の存在、、、など、12年前ならすぐにでもTVドラマ化されるようなストーリー展開と濃いキャラクター。
テルコが執着していた本当のことは、、、愛がなんだ というタイトルに全部詰め込まれてるかも。
『ハピネス』桐野夏生
湾岸沿いの高層マンションに住んでオサレな生活をする子育てママたちの人間模様と、自分との葛藤を描くお話。私はずーーーっと仕事をしているので、こういう世界が無縁できたけれど、本当にイマドキのママってもしや大変なのかも!とリアルに感じさせてくれた。桐野さんの小説はいつも胸にグイグイ迫る何かがある。
自分の仕事、持ち場、社会的な役割を持たないと、全部人に依存するし、人の評価がすべてになってしまう。子育てしていても、子どもが自分の成績表みたいな感じで、まったく別個の人間であることを忘れて幼少期からお受験に奔走し、良い子という評価を得られると、安心するというのかな。
夫の収入、職業、容姿についても、住まう環境、実家がどこなのかすらブランドになっているのか!という驚きもありつつ、もしも自分がそんな立場にいたらどんなころになってしまうのだろう(あり得ないけれど)とか想像してしまった。
真実の愛とは?結婚生活を続けることって?みたいな普遍的なテーマをたくさん盛り込んだドロドロあり~の、楽しくってワクワクするドラマです。
『ボロボロになった人へ』リリー・フランキー
そして今夜はこれ。もう、止まらないです!